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緩和縮小シナリオでドル/円はどう動く?
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

緩和縮小シナリオでドル/円はどう動く?

2013/6/20
リーマン危機後のマーケットは米国の量的緩和政策にどっぷりつかってきた。しかし、2009年3月18日のQE1から始まった量的緩和期間は長すぎたようだ。
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リーマン危機後のマーケットは米国の量的緩和政策にどっぷりつかってきた。しかし、2009年3月18日のQE1から始まった量的緩和期間は長すぎたようだ。米国では5%を下回るジャンク債バブルやコブライトローン(Cov-lite loans)と呼ばれるモラルハザード的な融資とその証券化が横行している。この理由は金利が低すぎて米国の金融機関が儲からなくなったためである。

米国の量的緩和政策とNYダウ(週足)

日銀の2年間の異次元緩和期間とFOMCの利上げ開始見通しの一致は偶然か?


(出所:石原順)

こうしたなか、FRBはモラルハザード的なバブルや金融危機の再発を防止するために、金融正常化への一歩を踏み出した。昨日のFOMC後の会見でバーナンキFRB議長は、「2013年末までに資産買い入れペースを緩める可能性がある」「2014年半ば付近で資産買い入れを終了する可能性がある」と述べ、現在の毎月850億ドルずつの債券買い入れ措置をこれから徐々に解除し始め、2014年半ばまでに完全に終える可能性を示したのである。

昨日FOMCが発表した経済見通しでは、「2014年末までに失業率 は6.5~6.8%に低下する」との楽観的な見方を示している。これはFOMCが政策金利引き上げの基準とする水準である。また「FOMC参加者19人中15人が2015年以降に利上げに踏み切る」との予想を示している。この見通しを受け、米国債市場では緩和縮小時期を9月FOMCとみるトレーダーが増えている。資産買い入れの縮小は「850億ドルから700億ドルに減額」というのがコンセンサスになっているようだ。

米WSJ紙は「米経済と金融市場が独り立ちできるかを見極めるいちかばちかの試みの手はずを整えた」と報道しているが、これはいちかばちかの試みではないだろう。「失業率は14年末までに最大6.5%まで下がる見込み」というFOMCの見通しは、黒田日銀の2年間という異次元緩和期間と一致しているからである。

バーナンキFRB議長は記者会見で「日銀は長引くデフレと闘っている」「日銀の政策に起因するボラティリティは想定外ではない」「日銀の黒田総裁を支持する」と記者会見で語っているが、日銀の2年間の異次元緩和を出口に向う千載一遇のチャンスとみていたに違いないのである。

5月22日にバーナンキFRB議長が出口に少し言及しただけで、世界中の金融市場が大混乱したように、市場の「期待」をコントロールするのは容易でない。ゴールドマンサックスが「FRBの総資産がGDPの6%以下に戻るのは2024年以降である」というレポートを出しているように、米国の出口(緩和前の水準に戻す)には7年~10年かかると言われている。

量的緩和策は「もっとやれ!」という市場の際限のない要求から「一度入ったら抜け出せない」というホテル・カリフォルニア状態となりやすい。なかなか足抜けできないのである。そんななか、日銀が異次元緩和という滅多に訪れそうもない機会を作ってくれたら、出口に向うのが合理的判断というものだろう。バーナンキはホテル・カリフォルニアからチェックアウトしたのである。立ち去ることが出来るかどうかは今後の景気次第だ。

では、米国のQE縮小により今後マーケットが混乱した場合はどうなるのだろうか? 数人の運用者に聞いてみたところ、「ECBは9月のドイツの選挙までは量的緩和や財政出動に踏み切れない状態にある。米国は日銀に緩和マネーを出させようとするだろう」と全員が答えている。ババ抜きゲームのババはバーナンキFRBから黒田日銀に移り、今後は日銀が世界に流動性を供給することになるだろう。

FOMCの経済見通しを受けて、米国の長期金利は急上昇している。一方、日本の長期金利は黒田日銀総裁の「長期金利の高騰回避に最大限努力する」という姿勢を受けてこのところ安定している。この違いから、ドル/円は上昇している。出口に向っているFRB に対して、長期金利を上げられない日銀の事情を考えると、ドル/円相場の大局はドル高となりそうである。

米10年国債金利 昨日は米金利上昇でドル独歩高相場に


(出所:石原順)

日本10年国債金利(日足) 日銀のPKOで直近の相場は落ち着いている


(出所:石原順)

FOMCの結果を受けて、米金利上昇からドル/円は97円台に上昇している。直近の円買いポジションがストップロス・ハンティングに巻き込まれ、ショートカバー相場となっているようだ。9日RSIの30%割れからドル/円の反騰は継続しており、直近下げ幅の38.2%戻しの97円57銭や半値戻しの98円75銭までの上昇があってもおかしくない状況だ。

ドル/円(日足) フィボナッチのリトレースメント(赤)と移動平均リボン(紫)

半値戻しは98円75銭


(出所:石原順)

トレーダーによっては「100円を超えてもおかしくはない」という見方もあるが、一旦深い亀裂の入った相場だけにシコリ玉も多く、目先の戻りは限定的になるだろう。1~3カ月の市場参加者のコストである移動平均リボンが98円から100円手前を覆っており、98円超は値が重くなりそうだ。14日ADXや26日標準偏差ボラティリティはピークアウトしており、これらの指標がこのまま下がるならしばらくレンジ相場になりそうである。この後の調整相場は基本的に99円から93円のレンジで推移するだろうという見方が多い。

ドル/円(日足) 円買いトレンドはピークアウト

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ドル/円(1時間足)

上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13時間移動平均線(赤)・21時間移動平均線(青)・21時間ボリンジャーバンド1σ(茶) 9時間RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

QE3縮小観測でドル高という為替の教科書的な動きとなっているが、気がかりなのは新興国の経済と株式市場の下落である。先週のレポートにも書いたように米国の緩和縮小は新興国経済に大きなダメージを与える。

5月22日の米国市場はトリプル安だったが、昨日の米国市場は株安・債券安・ドル高で反応している。為替市場は目先ドル高相場となりそうだが、NYダウや日本株の動きによってはリスク・オフの円高にもなりかねない状況だ。日米の金利と株の動きを注視したい。

ブラジルボベスパ指数(左)と上海株(右)の日足

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

NYダウ(左)と日経平均(右)の日足

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

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