長期的な円安観測に変化なし

「インフレ率を2年で2倍にするために、マネタリーベースを2倍にする」という黒田日銀の政策はまだ始まったばかりだ。日銀の総資産を2014年末に290兆円にするという目標なので、これから100兆円以上の過剰流動性が供給される。資産バブルになるのは目に見えており、投機筋も基本的にあと2年くらいは円安・株高相場が続くと見ているようだ。

日銀の総資産(単位:10億円) これから100兆円以上増える

日銀の総資産は2014年末に290兆円に拡大予定(4月21日現在は174兆円)


(出所:石原順)

以下は日本国債の金利表であるが、ここ数カ月で10年以上の国債金利が急低下したことで、生保などの機関投資家は運用に苦慮していると言われる。4月18日の日経新聞には「長期国債先物を例にとると、仮に利回りがゼロになった場合でも、先物価格は148円80銭程度。これが理論的な天井だ。ところが異次元緩和の翌日の5日には先物価格は146円40銭台まで上昇した。天井までわずか2円余りに迫ったのだ」という記事があったが、日本国債はもうインカムゲインもキャピタルゲインもない商品となっている。予定利率を下げたとはいえ、300兆円の生保マネーも外債投資を増やしてくるのは間違いないだろう。カネ余りの運用難で「円キャリートレード」は既に復活している。

日本国債の金利


(出所:フィナンシャルタイムズ)

日本長期(10年) 国債先物(日足)

10年国債金利が0%になった時の先物理論価格は148円80銭程度。上昇のノリシロは3円~4円しかない。


(出所:石原順)

日・米株価の過去62年間の循環

筆者の独断で言えば、株が下がりやすい月というのは「5月」・「9月」・「10月」である。そこが「逆張りの買い場」となる。

ただし、半年程度保有する場合の「5月買い」は9月・10月の下げ相場に巻き込まれてしまう。したがって、運用成績の落ち込み(ドローダウン)を避けて投資するには「10月末買いの4月末の売り」が消去法で残ることになる。

日経平均とNYダウの月別推移と「半年間」運用した場合の運用開始月別のリターン(戦後62年間の平均) 4月~10月の相場は冴えない?


(出所:「日本株転機のシグナル」前田昌孝)

この最もリスク商品買いに適した10月末~4月末の相場が終わり、5月相場が始まった。5月から10月の相場は難しくなる。2005年以降の米S&P500とドル/円の5月相場を見てみよう。チャートの黄色の部分が5月相場である。

2005年と2012年を除くと、S&P500の5月以降の相場は「高値波乱」的な相場が数カ月続いている。ドル/円も5月相場は円高バイアスが強いという印象だ。また、毎年上半期(4月から9月期)は輸出企業のドル売りが先行しやすい。こうした過去の経験則から言えば、やはり5月は波乱相場に対する警戒を怠れないだろう。

S&P500(青)とVIX指数(赤)(日足) 2005年~2013年 黄色の部分が5月相場


(出所:石原順)

ドル/円(日足) 2005年~2013年 黄色の部分が5月相場


(出所:石原順)

世界最大の通貨ファンド「FXコンセプツ」のジョン・テイラーは、4-6月期のドル/円の想定レンジを102円~92円としている。バイアスは円高方向で見ているようだ。一般的な見方としては、参議院選挙まで安倍政権は大幅な円高や株安を容認しないだろうから、大きな相場の崩れはないだろうと言う意見が多い。円安批判も出てきているなか、日本の政治家にとっては95円から100円のレンジが居心地がよいのだろう。いずれにせよ、しばらくこれまでのような一本調子の円安基調は鈍るだろう。この先も1995年の円安相場をなぞる展開となるのではないだろうか?

ドル/円(日足)のアナログチャート(2013年5月2日現在)

2013年相場は1995年相場との類似性がみられる。2012年9月からの上昇相場と95年4月からの上昇相場の比較(95年は4/18、2012年は9/13が起点・横軸は起点日からの経過日数)


(出所:石原順)

ドル/円相場の動く範囲

ドル/円は週足のトレンド指標(ADX・標準偏差)にピークアウト(天井)感が出ている。21週ボリンジャーバンド+1シグマは現在97円27銭付近を走っており、今週末の終値で相場が21週ボリンジャーバンド+1シグマを割り込むと、昨年11月から続いてきた強い円安トレンド相場は終了する。

ドル/円(週足) トレンド指標はピークアウトか?

上段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21週ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

一方、日足のほうは先週の100円トライ3度の失敗で相場の上値が重くなった。相場の支えとなっていた13日移動平均線を割り込んだことで、今度は下値試しとなっている。円高トレンドが発生しているわけではなく、26日標準偏差ボラティリティがピークアウトしていく過程での調整相場となっている。円高バイアスがやや強い相場となっているが、「13日移動平均線-2%乖離線」と「21日ボリンジャーバンド-2シグマ」が位置する96円20銭付近には押し目買いのオーダーが控えているようだ。

ドル/円(日足) 調整相場

上段:26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド2シグマ(赤)・13日移動平均線2%乖離(紫)


(出所:石原順)

ドル/円は週足・日足のいずれも方向感が出ていない相場である。日足の標準偏差ボラティリティがピークアウトしており、ここからは逆張り的な戦法に移らざるを得ない。

ドル/円「日足」相場の動く範囲は、概ね13日移動平均線の2~3%乖離の範囲(13日エンベロープ2~3%)である。筆者はこの13日移動平均線の2~3%乖離(13日エンベロープ2~3%)水準でドル/円の押し目買いや打診買いを考えているが、儲かればすぐ手仕舞うことになるだろう。あくまで短期勝負の手法である。また、逆張り手法なのでストップロス注文は必須である。

ドル/円(日足) 日足相場の動く範囲

13日エンベロープ2%(黄)・3%(赤)


(出所:石原順)

ドル/円の日足相場にトレンド(方向性)がないので、現在、筆者は1時間足での短期売買をメインの取引としている。ドル/円「1時間足」相場の動く範囲は、概ね13時間移動平均線0.8%乖離(13時間エンベロープ0.8%)である。13時間エンベロープ-0.8%ライン付近まで相場が下がると、相場は短期的に反発する。この相場の自律性を利用して、筆者は現在13時間エンベロープ-0.8%水準での短期売買を行なっている。

ドル/円(1時間足) 1時間足相場の動く範囲

13時間エンベロープ0.3%(ノーマル相場)・0.8%(トレンド相場)


(出所:石原順)