2013年は大転換の年と言われ、欧米を中心に「グレートローテーション(債券から株式への資金シフト)」が始まったと言われている。一方、日本では「アベノミクス」期待で円安=株高への大転換が起こっている。

相場はバブルとその崩壊の繰り返しである。誤解を恐れずに言えば、相場で大きく儲けるチャンスは2つしかない。

  1. バブル相場に乗って逃げ遅れずに降りること
  2. 危機相場を狙い、短期勝負の売りで儲けること

現在の相場環境は①のバブル相場である。欧米と日本で同時に株バブルが発生しており、2013年は大きなバブル相場に乗って儲かる可能性のある年と言えるだろう。

昨日のFOMCでは「緩和策の維持」および「資産購入のペースを調整する可能性」(市場に徐々に出口を織り込ませるための発言)の両方を指摘しているものの、バーナンキFRB議長は「経済が改善してもFOMCは緩和策を継続する」とし、FRBの資産購入についても「リスクは管理可能」と発言している。バーナンキ・プットは健在だ。

株式市場にはバリュエーション的にもう買えないという慎重な声もある。しかし、中・長期的な視点で欧・米・日の株の「月足」をみると、買いトレンド相場は始まったばかりであり、今後、グレートローテーション相場が展開されると仮定すれば、まだ第1段階に過ぎないと言えるだろう。

先週のレポートで述べたように、アベノミクスが成功するとか失敗するとかいう議論をしていても仕方がない。筆者の周辺のファンドは「安倍政権の成長戦略が成功するかしないかはわからない。しかし、日本で資産バブルとインフレが起こるのは確実だろう」とみている。海外の投資家は円安が進めば進ほど日本株の持ち高比率を上げているし、中国の富裕層の資金は香港のファンドを通じて日本に流入している。

独DAX(左)・NYダウ(中央)・日経平均(右)の月足

上段:26カ月標準偏差ボラティリティ(青)
月足買いトレンドが久々に発生している。まだグレートローテーションの第1段階?


(出所:石原順)

このところTVなどでアベノミクス・バブル報道が日毎に盛んになっているらしいが、ここまでの相場は毎年の循環通りである。株は10月頃から上がりはじめ、4月までが一番調子よく上がるという過去60年の循環(経験則)をなぞった動きに過ぎない。

日経平均とNYダウの月別推移と「半年間」運用した場合の運用開始月別のリターン(戦後62年間の平均)
(出所:『日本株転機のシグナル』前田昌孝)

したがって、4月以降の相場にはやや注意が必要だ。株もドル/円も4月は一旦ピークを付けやすい季節である。「5月に売り抜けろ(セル・オン・メイ)」という相場格言があるが、「5月売り」は株にも為替にも共通した動きである。4月は日本企業の新年度入りなので、円売り=外貨買いの新規投資が出てくるが、5月決算のヘッジファンドはここで売りをぶつけてくる可能性がある。一方、5月以降も日本の大幅高や独歩高が続くなら、それこそアベノミクス独自の要因で相場が上がっているということになろう。

筆者は「クロス円相場の10月末買い4月末売り」を推奨してきたが、2012年10月末買いのポジションはここまで(2013年3月21日現在)大幅な上昇となっている。この売買手法に限っては、4月に入れば実現益を確保するのがセオリーである。

豪ドル/円(月足)と10月末買い4月末売り 今年は大成功

2005年~2012年 赤は失敗の年


(出所:石原順)

日経平均(月足)と10月末買い4月末売り 今年は大成功

2005年~2012年 赤は失敗の年


(出所:石原順)

日本株の上昇はなんだかんだ言っても「円安」が牽引している。3月20日発足の黒田日銀体制は、「量的にも質的にも大胆な金融緩和を進める姿勢を打ち出す」と報道されている。したがって、円安や日本株高はしばらく続くだろう。しかし、ドル/円が97円~100円近くまで上昇すれば、一旦達成感から円売りの動きが鈍ることも想定しておきたい。仮に円安が止れば、日本株も小休止せざるを得ないだろう。

ドル/円(日足)のアナログチャート(2013年3月21日現在)

2013年相場は1995年相場との類似性がみられる。
2012年9月からの上昇相場と95年4月からの上昇相場の比較(95年は4/18、2012年は9/13が起点・横軸は起点日からの経過日数)


(出所:石原順)

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

今週は月曜日からキプロス・ショックと言われる動きがあったが、バブル相場はなんでも都合よく解釈するので、「キプロスの件は特殊ケース」ということで済まされてしまっている。投機筋の中にはユーロ売りを仕掛けたところもあるようだが、大相場にはなっていない。ポンド/ドルは大きな売りトレンド相場が一旦終り、先週から調整相場に移行している。今週のポンドやユーロ相場では乱高下で損失を出したファンドも多いようだ。

ユーロ/ドル(日足) 戻り売りとの声は多いが…調整相場で乱高下

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ポンド/ドル(日足) 大相場が終り、調整相場に移行

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

そうしたなか、為替市場では「やるものがない」との声も聞こえている。カネ余りのなか「やるものがない」となれば、NYダウ連動通貨である豪ドル/円の出番である。投機筋の間では「ドル/円や豪ドル/円の押し目買いが今一番無難だ」という意見が多い。現在、豪ドル/円日足の26日標準偏差ボラティリティは上昇しているものの、14日ADXは調整中である。そんなに強い買いトレンドが発生しているわけではないが、豪ドル/円相場が21週ボリンジャーバンド+1シグマを割り込むまでは押し目買いがワークしそうである。

豪ドル/円(日足) 今後、100円定着相場になるか?

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/円(週足) 円売りトレンド継続中

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

NYダウ(月足)と10月末買い4月末売り 今年は大成功

2005年~2012年 赤は失敗の年


(出所:石原順)