円全面安相場が続いている。しかし、年が明けてからの個別の通貨ペアをみていると、欧州通貨の動きが悪くなっている。ユーロは利下げ(本日のECB 理事会は金利据え置き予想)、フランス格下げの噂、イタリアの総選挙などを材料に、軟調かつ方向感のない展開が続いている。一方、豪ドルの方は年明けから堅調な展開となっており、直近の相場では1.05を上回ってきた。

豪ドル/ドル(左)とユーロ/ドル(右)の日足


(出所:石原順)

現在の円相場は結局ドル/円がどこまで上がるかにかかっているが、上記のような対ドル相場の動きも見ておかないと、収益の効率がかなり変わってくる。

ここからの相場で上値が有望な通貨ペアは「豪ドル/円」・「ニュージーランド/円」・「カナダ/円」・「ドル/円」の4通貨であろう。デイトレ、スウィング、順張り、逆張りのいずれの売買スタイルでも、比較的わかりやすい動きとなるだろう。

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/円(月足) 90円を超えてチャートの節がなくなった


(出所:石原順)

ニュージーランド/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

カナダ/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/円(日足) 欧州通貨は軟調

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ポンド/円(日足) 欧州通貨は軟調

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

さて、アベノミクス期待で円安基調が継続しているが、問題は政策の実現性である。その第1弾は1月22日の日銀金融政策決定会合である。1月8日の相場で円高・株安に振れたのは、「物価目標2%、政府・日銀、達成時期明示せず」と報道されたからだ。

1月22日の日銀金融政策決定会合では、日銀と政府の政策協定(アコード)ではなく、共同文書になるという。「日銀と政府の政策協定(アコード)ではなく、共同文書となることで政策が骨抜きとなる可能性がある」と、海外ファンドの一部で疑心暗鬼の声が聞かれる。

政府と日銀がしっかりした政策協定(アコード)を結べれば、日銀総裁は誰がなっても同じであろう。政策協定は拘束力をともなうからだ。しかし、共同文書が玉虫色の文書となると、投機筋も「共同文書はこれまで日銀が行ってきた政策の延長線上で何も変わらないのではないか?」との疑念を持つだろう。共同文書が日銀に甘い内容なら、4月の財務相OBの登用が噂される日銀総裁にしても、旧来型の天下り人事に過ぎず、日銀総裁がかなりの裁量を持つことになる。

ある海外ファンドの幹部は「安倍内閣のスタッフには浜田エール大学名誉教授(内閣官房参与)や市場をわかっている竹中平蔵氏がいるから、そう簡単に骨抜きにはさせないだろう。参議院選までは強気だ」と語っているが、年後半の相場にはやや不安が残る。日銀は「物価目標2%、政府・日銀、達成時期明示せず」との観測気球をあげた後、その反応について金融機関に細かいヒアリングを入れているらしい。日銀も必死である。いずれにせよ、市場の関心は政策の実現性に移行しつつある。

筆者は細かいことはよく分からないが、安倍政権は参議院選まで政策のバラマキを止めることはないと思っている。だから年前半は強気だ。(毎年のことだが…)ドル/円は88円50銭を上抜いてくると、89円に乗せてくると思われる。88円50銭の上値ブレイク、そこが90円トライへの発射台だ。

ドル/円(月足)

年前半の円安に賭ける(1~6月期=緑)
ただし、「円安ブーム」になると年を通して円安に


(出所:石原順)

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)