季節性変動は成功法則か、それともアノマリーか…

10月相場が始まった。筆者の長年の感覚では「株式投資の始まりは10月末」である。過去62年間の結果では、「日経平均やNYダウのインデックスに投資するなら、10月末に買って4月末に売った場合のリターンが最も大きい」というのが結論である。筆者が経験してきた1986年以降の相場でも「株が上がり始めるのは10月」という月別変動パターンが顕著であった。

相場には必ずこうなるという法則は存在しない。以下の文章はそれを前提に読んでいただきたい。筆者の独断と偏見で言えば、株が下がりやすい月というのは「5月」・「9月」・「10月」である。そこが逆張りの買い場となるが、半年程度保有する場合、「5月の買い」は9月・10月の下げ相場に巻き込まれてしまう。したがって、運用成績の落ち込み(ドローダウン)を避けて投資するには「10月末買いの4月末の売り」が消去法で残ることになる。

日経平均とNYダウの月別推移と「半年間」運用した場合の運用開始月別のリターン(戦後62年間の平均)=「180日ルール」

年初から4月末に掛けて5.8%値上がりし、4月末から10月末に掛けては1.9%の上昇にとどまり、10月末から年末に掛けて2.9%値上がりするというのが、2011年までの62年間の平均パターン


(出所:『日本株転機のシグナル』前田昌孝 日本経済新聞出版社)

今回のレポートではNYダウと豪ドル/円の「10月末買いの4月末売り」という「180日ルール」が過去の相場でどの程度有効であったのか検証してみたい。昨今の豪ドル/円はNYダウと連動しているリスク商品である。それは豪ドル/円のアルゴリズム取引の変数にVIX指数(SP500のオプション価格)使われていることでも明らかである。

格式相場は急落時にボラティリティ(変動率)が上昇しやすく、上昇および横這い相場ではボラティリティ(変動率)は低下していく。株式投資と豪ドル/円投資に関してあまり好ましくない現象は、ボラティリティの上昇である。株式市場のボラティリティが上がりやすい月は「9月」・「10月」である。それらの月は豪ドル/円相場にとっても鬼門であろう。

NYダウの季節性変動

NYダウの「10月末買いの4月末売り」を検証してみた。⑩のマークが10月、④のマークが4月の相場である。紙面の関係でとりあえず1985年から2012年まで(筆者の相場参戦期間)のチャートを表示しているが、過去28年間の相場で「10月末買いの4月末売り」がワークしなかった年は1990年、2001年、2008年、2009年の4回だけである。

「10月末買いの4月末売り」がゴールデンルールか迷信かはともかく、かなりの確率で季節性が発揮されているということが言えるだろう。ここで特筆すべきは、2008年のリーマン・ショック相場である。2008年4月末に株を売って2008年10月末に買うことで、リーマン・ショックの大暴落の影響もほとんど受けずにすんでいることである。1987年のブラック・マンデーの大暴落の影響もほとんどない。

NYダウ(月足) 2003年~2012年

「10月末買いの4月末売り」で2008年のリーマン・ショックも概ね回避できた
④が4月相場・⑩が10月相場、赤は「10月末買いの4月末売り」損失の年


(出所:石原順)

NYダウ(月足) 1995年~2003年

④が4月相場・⑩が10月相場、赤は「10月末買いの4月末売り」損失の年


(出所:石原順)

NYダウ(月足) 1985年~1994年

「10月末買いの4月末売り」で1987年のブラック・マンデーも回避
④が4月相場・⑩が10月相場、赤は「10月末買いの4月末売り」損失の年


(出所:石原順)

豪ドル/円の季節性変動

2000年以降はNYダウと連動性が高い豪ドル/円相場にも、「180日ルール」は有効であろうという推測が成り立つ。そこで、豪ドル/円の「10月末買いの4月末売り」を検証してみた。筆者が為替相場に参戦した1990年から2012年までのチャートを表示してある。

過去23年間の相場で「10月末買いの4月末売り」がワークしなかった年は1992年、1995年、2000年、2006年、2008年と6回ある。NYダウに較べると成功確率は落ちるが、豪ドル/円の「10月末買いの4月末売り」も概ね有効であると言えるだろう。NYダウ相場同様に2008年のリーマン・ショック相場の影響も回避できている。

豪ドル/円(月足) 2000年~2012年

「10月末買いの4月末売り」で2008年のリーマン・ショックも回避
④が4月相場・⑩が10月相場、赤は「10月末買いの4月末売り」損失の年


(出所:石原順)

豪ドル/円(月足) 1990年~2001年

④が4月相場・⑩が10月相場、赤は「10月末買いの4月末売り」損失の年


(出所:石原順)

ドル/円の季節性変動

ドル/円相場の特筆すべき季節性は「1月の相場反転」である。最近の相場では「1月反転」の威力はやや薄れているが、1980年代から1990年代の相場では「1月反転」がかなりの確率で起こった。これは説明のつかないアノマリーであるが、筆者のトラウマとなっているのは1月が円高(陰線)で始まる年というのは年を通して円高バイアスが強く、値頃感で逆張りの円売りをするとエライ目にあうということである。

ドル/円(月足) 1999年~2012年 20カ月移動平均線(緑)

①が1月相場


(出所:石原順)

ドル/円(月足) 1987年~1998年 20カ月移動平均線(緑)

①が1月相場


(出所:石原順)

以上、相場の季節性変動について書いてきたが、あくまでも過去の結果であり、相場に「過信は禁物」である。相場というのは「秩序エレルギー」と「無秩序エントロピー」のなれあうデタラメな運動である。「わかった!」と思った途端に「落とし穴」が待っている。警戒を怠らず、事前のストップ・ロス注文は必ず置いておきたい。相場は確率に賭けるゲームであるが、結局は資産管理につきるのである。

日足相場のテクニカル

9月半ば以降、ユーロ/ドル、ドル/スイス、ポンド/ドルなどの主要通貨は「調整相場」となっている。レンジ色の強い展開だ。トレンド相場を展開しているのは豪ドル/ニュージーランドだけである。豪ドル/円は21日ボリンジャーバンド-2シグマに到達し一旦下げ止っているが、9日RSIの底値水準である20%レベルには到達しておらず、もう一段の下値リスクにも注意が必要であろう。

本日のECB・BOE、明日10月5日のBOJと金融会合が続く。2日に豪州は利下げを実施したが、BOEも追加緩和を実施する可能性がある。明日の米雇用統計(NFP)の直近の予想は、+11万5,000人が市場予想の中央値となっている。

ユーロ/円(日足) 調整相場

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド2シグマ(赤)・13日移動平均線±3%乖離(青)


(出所:石原順)

ユーロ/ドル(日足) 調整相場

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド2シグマ(赤)・13日移動平均線±3%乖離(青)


(出所:石原順)

豪ドル/ニュージーランド(日足) トレンド相場

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)

上段:21日ボリンジャーバンド2シグマ(赤)・13日移動平均線±3%乖離(青)
中段:ストキャスティクス5・3・3
下段:9日RSI鈍感バージョン(赤)


(出所:石原順)