今後の相場動向とゼロコロナ政策

 今後の相場動向を決定付けかねないのは新型コロナがらみの悪材料です。

 現在の新型コロナ禍の状況ですが、時間軸からみても、他国との比較においても、大したことはありません。過去や他国に関する詳しいデータは示しません。国家衛生健康委員会が発表した4月16日のデータだけを示しておきます。

 発病ベースの新規感染者数(海外からの流入を除く、以下同様)ですが、3,504人でした。発生地域に大きな偏りがあり、上海市だけで全体の92.4%にあたる3,238人の新規感染者が出ています。つまり、上海以外では、わずか266人でしかありません。

 また、PCR検査で陽性反応を示したものの、無症状の新規感染者数は2万2,512人でした。この内上海市は95.9%にあたる2万1,582人でした。上海市以外はわずか930人に過ぎません。

 最も驚くべきデータはこの日の死亡者がゼロだということです。この日だけではありません。累計の死亡者数が示されているのですが、4月16日時点では4,638人でした。

 2021年12月31日時点の累計死亡者数は4,636人となっているので、今年に入ってから新型コロナで亡くなられた方はわずか2人だけということになります。

 高齢者であれば、風邪をひいてもこじらせ肺炎を引き起こし、亡くなられる方がいらっしゃいます。この死亡者数、感染者数、重病人数(4月16日は78人)から考えると、現在、長春市、上海市(一部)などで行われているゼロコロナ政策は、とても過剰な対策だと思います。

 知り合いが長春市に住んでいるので、現地の状況は正確に、かつ詳細に、わかります。3月11日から現在(4月17日時点)に至るまで、地下鉄、バスなどすべての交通機関がストップしています。

 都市封鎖当初はまだ、必要最小限の生活物資を販売する店がわずかに開いており、厳しい制限がありながらも、2日に1回、世帯に1人だけは買い物に出ることができたのですが、その後規制が厳しくなり、現時点では2日に1回、マンション区内にあるPCR検査場に下りて行く以外は、一切部屋の外に出ることは許されません。

 野菜などの食料品はマンションの管理部が配送の手配をしてくれるので、ネットで注文し、高くて品質の悪い商品を、仕方なく購入しているそうです。日本では考えられない対応です。ここまでする必要があるのでしょうか。

 死亡者の多い、少ないとは無関係に、都市封鎖をしなければならない理由があると考えざるを得ません。それは何なのでしょうか。

 もう一つ疑問に思うことは、なぜ、輸出の一大拠点である上海市ばかりがこれほど感染者数が多いのでしょうか。

 起源問題を巡る米中の衝突、米ロの化学兵器、生物兵器開発に関する論争とロシアの発する気味の悪い新型コロナ起源説、現在も続く中国の厳格な入国制限…。新型コロナにははっきりしないことが多すぎます。

 上海市、長春市など以外にも、大規模なゼロコロナ政策を行う地域が今後さらに広がるようであるならば、中国経済は大きな影響を受けます。輸出拠点で選択的にコロナ禍が発生すれば、輸出産業は大きな影響を受け、世界経済は物不足からなるインフレ圧力を受けることで、こちらも大きな影響を受けかねません。

 残念ながら、なぜこのようなゼロコロナ政策が必要なのかわからないため、結末の予想がつきません。ただ、リスクとして気味の悪いものがあるという点だけ指摘しておきます。

 少々悲観的に書きすぎました。

 今年の秋に行われる中国共産党全国代表大会では、習近平政権の第3期入りが決まります。党員を納得させるために、今年は経済社会を安定させなければなりません。全人代で決定されたマクロコントロールの最重要課題は経済の安定です。

 とにかく年前半、できるだけ早い時期に新型コロナを封じ込め、その後、減速した経済を引き上げるための思い切った政策をさみだれ式に発動するだろう。それによって、今年の成長率の目標である5.5%前後の数字を達成させるだろう。

 その過程で本土株式市場はあくまでバブルを起こさず、急落もせず、上昇トレンドを形成するだろうと予想しています。本土市場がしっかりしていれば、香港市場も欧米市場との相対感ではしっかりとした値動きになるだろうと予想しています。