新エネルギー自動車関連に注目。発展戦略の強化に恩恵を受ける銘柄

 今月の注目セクターは新エネルギー自動車関連です。景気対策の一環として新エネルギー自動車への発展戦略の強化が行われるとの見通しから先月、BYD(01211)を注目銘柄の一つに挙げました。こちらも引き続き注目して下さい。

 今回紹介したい銘柄の中で完成車メーカー3社は、いずれも7、8年前に創業した新興の民営企業で、経営者はいずれも別のベンチャー企業を創業した経験があり、それを米国市場に上場させたり、大手企業にバイアウトさせたりしたアントレプレナーたちです。

2021年12月期業績比較など

単位:億元、台
出所:2021年12月期決算書、各種公表資料より作成

 この内、蔚来集団(09866)理想汽車(02015)のCEOは、創業した別の会社をニューヨーク証券取引所に上場させた経験があります。

 彼らは欧米の証券会社を指南役として欧米流の経営手法を吸収し、欧米の資本市場から資金を調達しています。

 その過程で習得した“資本市場を最大限に利用する最新の経営スタイル”と、“多額の創業者利得”を使って、中国国内で新たなベンチャー企業を立ち上げ、それを香港市場に上場させたのです。今中国では、欧米流のやり方で事業を展開する企業経営者がたくさん出現しています。

 中国を競争相手とみる米国の政権担当筋からすれば、米国がイノベーションの仕組みを教え込み、資金まで与えた企業が、よりによって米国の強力な競争相手として中国の新興産業の発展をけん引しているのですから、“中国企業を証券市場から排除したい”と考えるのも、それはそれでよく理解できます。

 ただ、欧米の金融機関、ベンチャーキャピタル、エンジェル投資家、機関投資家、そして一般投資家も、彼らと運命共同体、ウィンウィンの関係です。米国内も反中一色ではないということを指摘しておきます。

 残りの2社については、部品メーカーを選びました。新エネルギー自動車への切り替えが今、劇的に起きようとしています。関連する産業全体が大きく発展すると予想します。

出所:中国汽車工業協会データより作成

 新型コロナ禍、ゼロコロナ政策で消費が弱含み、一部の企業では生産への影響もあります。また、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー、資源などの価格が上昇、コストアップも気になります。

 しかし、こうしたネガティブな材料があるからこそ、株価が上昇していないという面もあります。むしろ、その点を意識すべきではないかと思います。

注目株1:蔚来集団(09866、NIO)

 2014年11月設立の電気自動車メーカーです。2018年9月にニューヨーク証券取引所に上場、香港市場には2022年3月、資金調達を伴わない紹介形式で上場しています。

 李斌CEOは同社を設立する以前、自動車ユーザー向けに情報を提供するネット企業のビットオート・ホールディングス(BITA)を創業し2010年11月にニューヨーク証券取引所に上場させています。

 李斌CEOは電気自動車をSNSのような起点とし、多様なサービスを提供しようと考えており、自動運転、デジタル技術、電動力を一体として研究開発を行い、電池技術のイノベーションを推進しようとしています。

 資本家の視点からの大きな事業コンセプトが多くの内外の機関投資家たちから根強い支持を集めています。2017年12月に発売した7人乗りの高級SUVを皮切りに、現在車種を広げている最中です。

 2021年12月期は122%増収、105億7,230万元の赤字で、赤字幅は88%増加しています。生産は安徽江淮汽車集団との合弁会社で行っていますが、ここは組み立て工場で、たくさんのサプライヤーが存在します。

 アップルがスマートフォンを造るような製造方法なので、生産能力が気になりますが、2022年第1四半期の販売台数(引き渡しベース、以下同様)は28.5%増の2万5,768台、累計販売台数では19万2,838台まで増えてきました。

 自動車をつくって売るだけといったビジネスを目指しているのではない分、先行投資額は巨額です。全力で事業拡大にまい進するといった状態が続く見通しです。

 短期的には新型コロナ禍の影響が出ています。3月に入り、吉林省、上海市、江蘇省にあるサプライヤーが生産停止に追い込まれており4月中旬現在、その影響で生産が止まっています。いつ回復するのかははっきりつかめず、その点はリスクとして意識しておく必要があるでしょう。

 ただ、その分株価は調整しています。同社の強みは経営者にカリスマ性があり、資金調達能力が高いことです。その点を評価したいと思います。

蔚来集団の週足

期間:過去1カ月(2022年3月~4月14日)
出所:楽天証券ウェブサイト