ウクライナ危機いつまで?停戦合意はいつ?

 停戦が実現するとしても、領土問題を棚上げしての停戦しか考えられない情勢です。ロシアは、停戦前に東ウクライナでの実効支配地域を拡大し、領土問題を棚上げした上で停戦することを目指していると思われます。

 ウクライナは、逆に停戦前にロシアの実効支配地の奪回を目指すと考えられます。ゼレンスキー大統領はロシアの攻勢が続いているマリウポリがロシアの手に落ちれば、停戦協議は打ち切りと表明しています。今後、東ウクライナでの戦闘が長期化し、停戦合意は遠のく可能性があります。

 今後ウクライナで起こることを予測することは不可能ですが、その中で考え得るもっとも楽観的なシナリオと悲観的なシナリオを作りました。どちらも現実には起こり得ないことと思っています。現実に起こることが、そのどちらに近くなるか、今後の展開を注意深く見ていく必要があります。

【1】最楽観シナリオ

 ロシアが経済・政治・軍事的に苦境に陥り、停戦を求めざるを得なくなる。ロシア国内から、この事態を招いたプーチン大統領への批判が高まり、大統領が失脚。ロシアは国際社会に謝罪し、ウクライナに有利な形で停戦合意が成立。ロシアへの米国欧州日本などの制裁は解除される。

【2】最悲観シナリオ

 ロシアは強気を崩さず、ウクライナでの戦争は長期化。日米欧などによる対ロシア制裁はさらに強化され、ロシアへのダメージは大きくなるものの、制裁をする側および世界経済全体が受けるダメージも大きくなり、世界的な景気後退につながる。米中対立による分断に、ロシア経済の分断が加わることで、グローバル分業を前提に成長してきた世界経済が壊れる。日米欧のロシア事業で巨額の減損が出る。

 ロシアが経済的に追い詰められる、あるいは軍事的に追い詰められることがない限り、事態の改善は期待できないかもしれません。ロシアが経済制裁によって現実にどれだけ深刻なダメージを受けているかが鍵です。

 制裁は骨抜きになっており、思ったほどのダメージは及んでいないとの見方もあります。一時急落したロシアの通貨ルーブルが急反発していることに、それがあらわれている可能性もあります。

ロシア・ルーブルの対ドル為替レート推移:2022年1月3日~4月15日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 ロシアの主要産品である原油・ガス・穀物の市況が高騰していることが、ロシア経済に追い風となっています。欧州がロシアからのエネルギー輸入を継続、中国やインドがロシアからの輸入を増やすことを検討していることによって、ロシアへの経済制裁は骨抜きになっている可能性があります。

 ロシアへの制裁で欧州の足並みが乱れる可能性もあります。4月24日にフランス大統領選の決選投票が行われる予定です。決戦投票は、現職のマクロン氏と国民連合のルペン氏の間で争われます。

 ルペン氏は原油高がフランス国民を苦しめている現状を考慮してロシアからのエネルギー輸入を続ける方針を示しています。ルペン氏が当選すると、フランスは対ロシア制裁と距離を置くようになる可能性があります。