FOMCが終わり米国の追加金融緩和観測の高まりを理由にドルが売られている。景気悪化を食い止めるため、今後FRBが現在のポートフォリオを25%程度拡大し金融緩和策を継続するとの見方も一部に出ている。7月28日のセミナー「2010年後半の相場シナリオと注目ポイント」では、2010年相場は「年前半ドル高・年後半ドル安」というドル相場の基本的なパターンとなる可能性が高いことを指摘したが、ドルインデックスは6月を境にして下落基調に転換している。ドルは上下動を繰り返しながらも、ドル安の大きな流れは11月の中間選挙まで継続する可能性が高くなっている。

オバマ大統領の経済顧問のローレンス・サマーズが年末に辞任することが発表されたが、米国では7月以降、主要な経済対策の幹部が次々に辞めている。人気のないオバマ大統領は人事を刷新してやる気をみせる構えのようだが、人が辞めるのにはそれなりの理由があるものだ。追加金融緩和を行っても米国の景気は当面低調だとみておいたほうがよいだろう。そうであれば目先の米金利の反転は限られ、やはり年後半はドル安相場が展開されるだろう。

ドルインデックス(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(赤)


(出所:石原順)

1990年のバブル崩壊で、日本はバブル膨張の原因となった<両建て経済政策>を批判されたが、資産と負債の両方を膨らませて経済運営を行うという手法は、いまや世界各国がおこなっている政策だ。この<資産と負債の両方膨らませるという経済手法>は、簡単に言うと<ネズミ講>と同じである。ネズミ講経済はどこかで破綻する。

資本主義経済の中で、企業も個人も負債と資産の両建て経済に便乗してきたが、リーマン危機で個人や企業の負債は国家に付け替えられた。もう、この負債を転がす先はない。念の為に言っておくが、国家は破綻しない。破綻するのは個人である。資産運用の究極の目的は将来到来するインフレへのヘッジに他ならない。これだけジャブジャブに金をばらまいてもデフレ(期待インフレが上がらない)なのは金融システムが壊れているからであるが、現在、金融機関は時価会計の凍結で保護されている。将来のどこかで「本当に国債(借金)は返済できるのか」という疑心暗鬼が市場を覆ってくると思われるが、現在のゴールド買いは、そういったことへの懸念に過ぎない。2番底懸念で先進国では通貨安競争や量的緩和のさらなる拡大が噂されるなか、ゴールド相場がバブルしているが、本来、国家に財政規律を催促するのは国債市場や外為市場である。

ゴールド先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

このレポートを書いている最中に、介入が行われたという噂が流れてきた。みな84円割れでの介入を予想していたようだが、84円とか82円付近は取引高が多く金がかかる。本当に介入したのなら、84円半ばでの介入は省エネ型?のうまい介入である。

ドル/円(9月24日 1分足)


(出所:楽天証券マーケットスピード)

「消去法で豪ドル買い」、「移動平均乖離からみれば、歴史的な円高局面にある」に書いた理由で、現在、筆者は豪ドル/ドル・豪ドル/円・ユーロ/ドルの買い(順張り)とドル/円・ポンド/円の買い(逆張り)のポジションを持っている。

ブログ「石原順の日々の泡」で、【玉の入れ替え】トレンドフォロー<応用編>という記事に書いたように、最近の相場はボリンジャーバンド1σの外の相場であっても、一旦、プロフィット・カット(目標値での利食い)を入れた方がうまくいっている。プロフィット・カット(目標値での利食い)のポイントは、21日ボリンジャーバンド2σと13日移動平均3%乖離銭が接近した水準である。(ドル/円のみ21日ボリンジャーバンド2σと13日移動平均2%乖離水準)下のチャートの黄色い●の部分がそのポイントである。

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

買いの場合は、21日ボリンジャーバンド2σと13日移動平均3%乖離水準に近づいたら一旦売っておいて、下がったらまた買うという戦法だ。筆者はこういった【玉の入れ替え】(平均買いコストを下げる・平均売りコストを上げる)をよく行う。もっとも、売ってしまってもまだ上がる場合は、売値より高い値段で再エントリーすることもよくあるので、すべてがうまくいくわけではない。相場の醍醐味はトレンドを取ることだが、トレンド期間中もポジションの入れ替えは結構行っている(特にオプション取引で儲けのレンジ幅を拡大させるためには、こういった操作は欠かせない)。

ドル/円・ポンド/円の買いポジションは月足の移動平均乖離に着目した逆張りである。このケースでは決してレバレッジを上げてはいけない。月足で勝負しているのだから、余裕を持って売買しないとポジションを維持することができなくなる。

ドル/円(月足) 60カ月移動平均線(赤)・20%乖離(青)・30%乖離(赤)


(出所:石原順)

ポンド/円(月足)60カ月移動平均線(緑)・20%乖離(赤)・30%乖離(青)


(出所:石原順)