相場は拡大と収縮と平均回帰を繰り返す。一見、無茶苦茶に動いているように見えるマーケットだが、そこには「限度」と「リズム」がある。

相場の動く範囲を観察してみよう。<1時間足>でみると、通貨の変動は概ね13時間移動平均線の±0.8%乖離の範疇で動くといわれている。最近のノーマル相場では±0.5%がコアレンジである。また、<5分足>での通貨の変動は概ね13本(65分)移動平均線の±0.3%乖離の範疇で動くが、最近のノーマル相場では±0.2%がコアレンジとなっている。この相場の自律的な相場の運動範囲で注目すべきことは、「相場が移動平均の乖離の限度を大きく飛び出しても、いったんはバンドの周辺まで戻ってくることが多い」ということだ。

このことは、ブログ『石原順の日々の泡』で既に書いているので、そちらを参照されたい。

今回のレポートでは、もう少し「長い目」で相場を観てみよう。つまり、月足での観察である。ドル/円相場が60カ月移動平均線の-20%乖離に相場が到達しており(昨年12月に筆者がドル/円の逆張りを行った水準である)、一旦、円安に反転してもおかしくない局面にあることは第148回のレポートで既に述べた。

ドル/円(月足)60カ月移動平均線乖離(緑)・20%乖離(青)・30%乖離(赤)


(出所:石原順)

60カ月移動平均と現在の乖離状況を通貨ごとにチェックしてみよう。

ユーロ/ドル(月足)60カ月移動平均線乖離(緑)・20%乖離(青)・30%乖離(赤)


(出所:石原順)

ユーロ/円(月足)60カ月移動平均線乖離(緑)・20%乖離(青)・30%乖離(赤)


(出所:石原順)

ポンド/円(月足)60カ月移動平均線乖離(緑)・20%乖離(青)・30%乖離(赤)


(出所:石原順)

通貨の変動は概ね60カ月移動平均線乖離バンドの30%乖離水準が限界で、そこを飛び出しても滞留時間は短い。すなわち、30%乖離バンドまでは比較的短期に戻ってくるという特徴がある。

この「相場の限界」を利用して成功しているファンドがいくつかある。カウンタートレードや相場の転換点をとらえることの好きな連中が今一番注目しているのは、「月足の移動平均乖離」である。彼らは機会を探りながら、どこかで<逆張り>に動くだろう。

当然のことであるが、相場の転換点をピンポイントで当てるゲームである<逆張り>は、壊滅的な損失を被る可能性があり、ストップ・ロス注文は最初から入れておかなくてはならない。ストップ・ロス注文を出さない人は、相場の世界に残っていない。

さて、最近筆者がユーロがらみの通貨ペアの話ばかりしているせいか、「豪ドル/円やニュージランド/円相場はどうなのですか?」という問い合わせが増えている。豪ドル/円は筆者も注目しているが、6月以降はトレンドが出ていない状況となっている。下のチャートを見ていただければわかるが、74円~79円をコアレンジとした典型的なボックス相場である。
標準偏差ボラティリティが下がっていく過程では、21日ボリンジャーバンド<2σ>か13日移動平均線の3%乖離にタッチしたら相場は一旦反転している。つまり、最近の豪ドル/円ではそこが<逆張り>ポイントとなっている。

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均線3%乖離(青)


(出所:石原順)

基本的にクロス/円の動向はNYダウと上海株の動向次第だが、NYダウも現在トレンドがないので、派手な動きにはなりにくい。筆者は通貨の投機売買では、現在ほとんどポジションを持っていない。ユーロ/円の売りポジションがなくなり、ユーロ/スイスの売りが残っているだけである。

いずれにせよ、移動平均乖離からみれば、歴史的な円高局面にあることは間違いないだろう。この先の相場は<順張り><逆バリ>の両面作戦で臨みたい。

NYダウ(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:26日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均線3%乖離(青)


(出所:石原順)

ユーロ/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均線3%乖離(青)


(出所:石原順)

ユーロ/スイス(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)