ロシアへの制裁を骨抜きにする3つの問題

 ウクライナ停戦への期待が遠のき、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対し、欧米および日本などが経済制裁を強化していますが、それが功を奏していません。

 EU(欧州連合)と米国がロシアの銀行7行をSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出し、さらにEUがロシア向け貨物に港湾を使用させない制裁を打ち出しました。ロシア経済にかなり大きなダメージが及ぶはずですが、それがロシアの行動を変える効果は出ていません。

 経済制裁の効力を弱める3つの問題が残っているからです。

【1】中国がロシアとの結びつきを強める問題

 反米で結束する中国が、ロシアとの結びつきを強めることが、ロシア制裁の抜け道となっています。欧州向けのエネルギー輸出の減少を、中国向けの増加でいくらかカバーできる可能性があります。また、SWIFTから締め出されたロシアの銀行が、人民元建ての取引を増やして、対抗する可能性もあります。

【2】欧米がロシアからのエネルギー輸入を完全に止められない問題

 天然ガスの4割をロシアからの輸入に依存する欧州は、ロシアからの輸入をいきなりゼロにすることはできません。

【3】原油・ガス・穀物の市況が高騰している問題

 欧米がロシアへの制裁を強めれば強めるほど、ロシアの主要輸出品である、原油・天然ガス・穀物の市況が高騰します。輸出品の市況高騰は、ロシア経済に追い風です。市況が高騰することでロシアが得られる輸出代金は、輸出量の減少ほどには減りません。ロシアへの制裁が、逆にロシアに追い風となる皮肉な事態となっています。
 欧米がロシアからのエネルギー輸入を続けることで、結果的にロシアが戦争を継続する資金を渡していることになる問題は、解決が困難です。この問題をなくすために、欧米はロシアからの原油禁輸を検討しているわけですが、禁輸を検討している事実が、さらに原油を高騰させる悪循環となっています。原油が上がれば上がるほど、ロシアは中国などへの輸出を増やすことで、メリットを得ることができることになります。