ドル全面安相場となっている。ドルインデックスの76割れ、ユーロ/ドルの1.5接近、豪ドル/ドルの0.92越えなどドル安相場が加速中だ。一方、豪ドル/円を中心にクロス円相場が上昇したことから、円相場はドル安トレンドの蚊帳の外となり、ドル/円も87円~88円を抜けずに90円台に戻してきた。相場周期的には、今週を起点に2週間から5週間の調整局面(円高の修正)に入った可能性がある。

株式市場をはじめとして、金余り相場で金融市場のボラティリティ(変動率)がいっこうに上がらない。これは各国のバブル政策と金融緩和というPKOに因るところが大きい。今年の外為相場はATRも相場変動幅が長期に上がらないし、株が下がらないので、株価連動のクロス円も本格的な円高となりにくい。本格的な円高局面というのは株価下落によるリスク収縮局面が多いが、今後、80円に向かうような本格的な円高局面があるとすれば、株価の下落とボラティリティの上昇が起きるだろう。

日経平均(左)とNYダウ(右)のヒストリカルボラティリティ日足


(出所:ブルームバーグ)

豪ドル/円とユーロ/円の20日ATR


(出所:石原順、ブルームバーグ)

VIX恐怖指数(黄)とドルインデックス(緑)の日足


(出所:石原順、ブルームバーグ)

現在はまだ過剰流動性による金融相場が継続しており、そのような兆候はみられない。バブル相場の賞味期限は半年から最長1年半であるが、現在はその8カ月目である。株が上昇基調にあるうちは、為替相場の大きな波乱(円高)はないのかもしれない。

フィラデルフィア KBW銀行株指数(左)とSP500(右)の日足


(出所:石原順、ブルームバーグ)

さて、昨日のポンド相場で筆者はひどい目に遭ったが、これは、イングランド銀行(BOE)のフィッシャー理事がFT紙とのインタビューで、「資産買い入れプログラムが、開始時に望んでいた規模とスピード面での効果をあげていることを一段と確信している」と発言したことがきっかけだ。英国が簡単に量的緩和の解除が出来るとは思えないが、現在、最もバブル状況にあるのは各国中央銀行(とくに米・英)なので、当局者の発言はショートカバーを誘いやすい。来週はじめにはユーロ高に不満を持っているユーロ圏財務相会合が予定されており、11月の3日・4日は米FOMCが控えている。当局者の発言やイベントリスクには注意したい。

一方、オーストラリア準備銀行(RBA)のスティーブンス総裁は、「経済の強さにより豪ドルは1.10米ドルにまで押し上げられる可能性がある。豪中銀は追加利上げを行う上で、消極的になり過ぎることはない」と発言しており、各国の通貨高に対する認識にはかなり温度差があるようだ。

豪ドルやユーロ、あるいはクロス円相場も買われすぎの状況にさしかかっているなか、ファンダメンタルズや日足のテクニカルを見ていても埒があかない。買えばよいのか、売ればよいのか、ますますわからなくなっていく。不安になるだけだ。

やはり「1時間」足のトレードが一番良い。ボリンジャーバンドの1σの外だけで、相場をやっていればよいので気楽である。移動平均の傾き+ADXの上昇局面であればいつでも出動できるし、最高値を買うのも最安値を売るのもこわくない。筆者の22年間の相場生活のなかで最も合理的で効率的な売買手法である。

豪ドル/円(左)とユーロ/円(右)の1時間足
21時間ボリンジャーバンド1σの飛び出し局面と14時間ADXの推移


(出所:石原順、楽天証券)

10月末には「マーケットスピードVer8.2」がリリース予定らしい。

新しいマーケットスピードには、「ATR」や「平均足」といった新しいテクニカルツールが搭載される。また、チャートのタイム・フレームも「10分・30分・1時間・4時間」などかなりの時間枠が追加されている。

「マーケットスピードVer8.2」のリリースに合わせて、「ATR」・「ADX」・「ボリンジャーバンド」・「平均足」などの簡単な説明資料を筆者は現在作っているが、新しいマーケットスピードは格段に使いやすくなっており、楽天証券の利用者は最強のトレードツールを手にすることができるだろう。

おそらく一般の投資家が普通に利用しているチャートはローソク足だが、ローソク足は陰線(赤)と陽線(青)が不規則に出現するので、相場の明確な方向性をみるのに苦労する。この連載の第9回『こま足(平均足)』で「平均足」をとりあげたが、ローソク足の不規則なノイズを取り払って相場の方向性を判断するために作られたのが「平均足」である。陽線と陰線に連続性があるので相場の流れを読むには適しているだろう。「マーケットスピードVer8.2」に乞うご期待!

ポンド/円(日足)の「ローソク足」(マーケットスピードVer8.2)


(出所:楽天証券)

ポンド/円(日足)の「平均足」(マーケットスピードVer8.2)


(出所:楽天証券)

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