バイデン政権は脱炭素化を目指すも米国の原油供給量は増加する見通し

 米国はシェールオイル生産量が短期的に増える可能性が高い。バイデン政権は気候変動対策に重きを置いているため、シェール増産を言えない立場にある。新規のパイプライン設置を認めず、さらに連邦用地のリースも停止しているため、金融機関を含め投資家らはシェール開発への投資に忌避的であり、投資抑制によってこれまでのような供給増加傾向にはいたっていない。温暖化対策と油価高騰の板挟みとなり、対処策としてOPECプラスに対して増産を要請してきたが、OPECプラスは余力低下などを理由にその要請を退けてきた。新たに掘削活動が大きく増加するような市場環境にはないが、足元の原油価格水準からすると、コスト見合いの採算性が極めて高く、新たな掘削数が徐々にではあるが再び増えてきている。また、掘削済みの未仕上げ坑井(DUC)の取り崩しも進んでいる。これは地中に埋まっている在庫を取り出す作業が進んでいることを表す。

 バイデン政権発足後、これまでのエネルギー政策とは一転、さらに新型コロナウイルスのパンデミックも重なり、DUCは一昨年の夏ごろをピークに減少傾向の一途をたどっている。ただし、まだその数は多く、さらに1つの坑井からの生産性も高まっているため、しばらくは安定した供給が期待できる。これらを踏まえ、EIA(米エネルギー省)は、今年の米国の原油生産量は過去最高となると見通している。

米国のリグ稼働数およびDUC(基)

(EIAのデータを基にクリークス作成)

米国の原油生産量(1,000バレル/日)

(EIAのデータを基にクリークス作成)