2019年原油相場レビュー
NYMEX WTI月足 期近引継足(ドル/バレル)
2019年の原油(WTI)価格は、2018年の年末の下げから一転して上昇、4月には60ドル台後半まで値を上げた。その後は押しが入り、50ドル台前半で揉み合い。上げ渋る状態が続いたが、年末に向けて再度上昇し60ドル台へと値位置を切り上げている。
第1四半期(1-3月期):45~60ドル
株価急落の影響を受け、2018年の年末にWTI期近は42.36ドルまで下落、それを底値に第1四半期は切り返す動きとなった。米中通商協議への進展期待が高まり、株価が上昇したことで投資家心理が改善、リスク選好ムードが原油相場の下値を支えた。
また、石油輸出国機構(OPEC)とロシアを含む非加盟国(OPECプラス)が日量120万バレルの協調減産を開始し、需給改善期待から1月には50ドルを回復した。
米政府がベネズエラ産原油に対して制裁を科す可能性を示唆したことや、閉鎖していたリビアの主要油田の操業再開見通しを受け一旦押しが入る場面もあったが、2月には1月のOPEC産油量が減少したことが確認されたことで、OPECらの減産に対する積極姿勢が市場に評価されて底堅さを維持。3月に入ると、ベネズエラの供給減少が鮮明になり、サウジアラビアがさらなる減産を公約するなど、需給引き締まりへの警戒が強まり、60ドルを回復する場面も見られた。
第2四半期(4-6月期):50~65ドル
第2四半期は60ドルを超える水準から始まったが、概ね軟調に推移した。
4月は、3月のOPEC産油量が減少したことが明らかとなり、需給引き締まりへの期待が高まった。減産もあるが、政情不安、経済停滞、米国の制裁や停電の影響からベネズエラの産油量が大幅に落ち込んだほか、リビアの内戦危機やイラン産原油の禁輸措置の影響もありOPECの産油量は減少、供給減少が懸念された。これらを手掛かりに一時66.60ドルまで上昇、これが結果的に2019年の高値となった。
しかし、5月に入ると地合いは一転した。米国が対中追加関税の引き上げ方針を表明、貿易摩擦悪化への懸念から市場のセンチメントは弱気に傾き、再び60ドルを割り込む展開に。6月には50ドル割れ目前まで値を冷やす局面も見られたが、米国とイランの緊張といった中東の地政学的リスク、OPECプラスの減産継続見通しなどを手掛かりに買い戻された。
第3四半期(7-9月期):50~63ドル
第3四半期は、9月にサウジアラビアの石油施設が攻撃されたことで上振れする場面もあったが、概ね上値の重い商状となった。
7月は、引き続き中東の不安が燻るなか、米中通商協議の再開、OPECプラスの減産継続、米国の金融緩和期待、ハリケーンリスクなどを手掛かりに、再度60ドル台を回復した。ただし、イランが米国に対して歩み寄りの姿勢を示したほか、米中貿易摩擦の長期化が重石となり、買いは続かずに反落。
8月もこの地合いを継続、9月からの対中追加関税発動表明を受けてリスク回避の流れに拍車がかかった。株価は連日の大幅安となり、原油も連れて売られ、50.52ドルまで下落する場面もあった。
9月は一時跳ね上がった。イエメン反政府武装組織フーシ派によるサウジアラビアの石油施設へのドローン攻撃を受け63.38ドルまで上昇したが、攻撃された施設が早期に完全復旧する見通しが示されたため一時的な上昇にとどまった。
第4四半期(10-12月期):50~61ドル
第4四半期はジリジリと値位置を切り上げた。サウジアラビアの原油生産が早期に回復したことで、10月初旬は売りが先行して始まった。市場のセンチメントが急速に冷え込んだことで、前月の地政学的リスクを手掛かりとした上昇分を全て削るだけにとどまらず、50ドルを窺う動きとなった。しかし、その後は米中貿易協議の進展期待、OPECの減産強化観測などを背景に切り返す動きに。
11月は、米中貿易強に対する要人発言が二転三転したため、60ドルを前に上げ足が鈍ったが、米株式市場の高値更新に支えられ小確り。
12月に入ると、OPECプラスが減産強化で合意したことを切欠にレジスタンスとなっていた60ドルをブレイク、その後は米中貿易協議の第1段階の合意を受けて株価が上値を伸ばし、リスク選好度の高まりが原油相場にも波及、値位置を切り上げた。