2021年原油相場レビュー
NYMEX WTI月足 期近引継足(ドル/バレル)
2021年の原油(WTI)価格は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済停滞への警戒感はあったが、エネルギー需要には底堅さが示され、さらにOPECプラス(石油輸出国機構=OPECと、非加盟国で構成される組織)の協調減産が続いたことで、需給タイト感が強く意識される状況となった。過去最高値を更新する米株式市場の動きを眺め、リスク選好の動きから投機的な買いも集まり、コロナ禍前の水準を上抜いて2014年10月以来の高値を示現した。ただし、11月下旬に新たな変異株が現れたことで上げ一服となっている。
第1四半期(1-3月期):50~65ドル
第1四半期は上値を切り上げる展開となった。欧米で先行してワクチン接種が始まり、それとともに各国での制限緩和の動きが期待され、2020年下期の上昇トレンドを継続。さらに新政権を発足させたバイデン米大統領は大規模な財政出動を実施し、経済正常化への期待感がより強まった。また、サウジアラビアが自主減産を表明、OPECプラスとしても減産維持で合意したこともサポート要因。このほか、米国南部が寒波に見舞われ、石油関連施設が停止したことも相場を押し上げる一因となった。デルタ株発生により下押される場面もあったが、おおむね堅調に推移した。
第2四半期(4-6月期):60~70ドル
第2四半期は上昇基調継続、特段目新しい材料は見当たらなかったが、一段高となった。イラン核合意再建協議が再開したが、協議が遅々として進展しなかったため、売り材料視されるにはいたらず。それよりもワクチンの世界的な普及が進行したことで、経済回復への期待感に支えられた。米株式市場の主要指数が上げ足を強めたことで、リスクオンの機運が高まったことも買いの勢いを促した。6月には75ドル目前まで上昇し、2018年10月以来の高値を付けた。
第3四半期(7-9月期):60~75ドル
第3四半期は「往って来い」。OPECプラスが段階的減産縮小(増産)で合意したことで、市場への供給量が増えるとの見方が上値を抑えた。また、それまで長期にわたって上昇が続いていた反動からの調整の押しも入り、8月には60ドル水準近くまで値を崩す場面もあった。しかし、米国のインフラ投資法案が可決したことでエネルギー需要喚起への期待が高まったことや、ハリケーン「アイダ」が米国南部を襲ったことによる供給障害などが買い材料視され、9月には再び切り返す動きとなった。
第4四半期(10-12月期):65~85ドル
第4四半期は一段高となる場面もあったが不安定な値動き。米国などの消費国の要請に対してOPECプラスが追加増産を見送ったこと、石炭やガス価格が高騰したことなどを手がかりに買いが先行し、10月には85.41ドルまで上昇する場面も見られた。しかし、米国主導で消費国が協調して備蓄を放出することを決定。さらにオミクロン株の発生により先行き不透明感が高まり、リスク回避の動きが強まったことで60ドル台前半まで急速に値を冷やした。下げ一巡後、年末に向けてはオミクロン株の重症化リスクが低いとの声に楽観ムードが広がり、75ドル水準へと戻して引けた。