OPECの高値誘導も需給バランスは早い段階で供給過剰に転じる見通し

 消費回復ペースに増産ペースが追い付いていないことで、2020年の第3四半期以降は需要が供給を上回った状態が続いている。このまま需要が供給を上回る状況が続くと、油価は再度上昇局面を迎えることは必至だが、これには懐疑的にならざるを得ない。

 前述の通り、OPEC非加盟国盟主のロシアは、すでに余力が乏しくなっているが、今年の産油量は記録的な水準となる見通し。早い段階でコロナ禍前の増産局面の水準、もしくはそれ以上まで増えるという。また、OPEC盟主のサウジアラビアも、他の加盟国との兼ね合いもあるが、余力を残しているためこちらも記録的水準となることが見込まれている。コロナショック前にロシアとサウジアラビアのシェア戦争が勃発した経緯があるが、その際の生産水準をも上回る可能性が高い。

 また、数量はさほど需給に影響しないとみられるが、消費国側の備蓄放出もある。昨年、米国、中国、インド、韓国、英国、そして日本が戦略備蓄放出を決めている。需要に対する放出量はわずかではあるものの、米国は数カ月かけて合計5,000万バレル、インドは500万バレル、英国は150万バレル、韓国は350万バレル程度放出する予定。日本は推定で約420万バレルの放出となる模様。

世界の石油需給バランス(100万バレル/日)

(EIAのデータを基にクリークス作成)