需給動向

需要は回復傾向にあるが完全回復したとの判断は早計

 世界最大の石油消費国である米国の石油製品需要は、コロナショック以前の2019年は日量2,000~2,200万バレル程度で安定的に推移していた。しかし、新型コロナウイルスの第1波の影響を受け、2020年4月には同1,400万バレル割れにまで急減した。同年夏から1年間はおおむね同1,800~2,000万バレル程度の需要が続き、昨年夏以降は徐々に増加傾向を示し、2019年のレンジ付近にまで戻してきている。行動規制の強化やワクチン接種の普及、大型の財政出動や大規模なインフラ投資法案可決などにより経済正常化に向けて前進し、それに伴って石油製品需要も盛り返してきていることがうかがえる。ただし、さらなる需要増加には懐疑的にならざるを得ない。

 石油製品需要は季節的な変動要素もあるため、コロナ禍以前の2019年の同時期との比較でみると、コロナショック以降は総じて2019年を下回るケースが多く散見されている。やはり感染者が増えると行動制限などの規制が生じ、消費が抑制されるといった構図が確認されている。一時的に上振れする局面もあるが、均(なら)してみると、コロナ禍以前の水準まで需要が回復したとの判断は早計だろう。昨年来、一昨年に比べると経済回復への期待があるとはいえ、足元ではオミクロン株の感染が広がりをみせているため、経済への悪影響が出てくることで消費抑制につながる可能性もあり、予断を許さない状況が続く。仮にオミクロン株の感染の影響が限定されたとしても、世界的に脱炭素社会への取り組みが進んでいくことは必至であり、化石燃料消費の上振れ余地は限られる可能性も出てくるため、オプティミスティックな見方をするのはリスクがある。昨年下期以降、相場上昇とともに石油需給逼迫(ひっぱく)が警戒され、意識されたのは供給面からの影響が強かったと判断せざるを得ず、原油相場の行方を推しはかるには供給面を注視すべきだろう。

米国の石油製品需要(1,000バレル/日)

(EIAのデータを基にクリークス作成)

世界の新規感染者数(人)と米国の石油製品需要(%)

(ジョンズ・ホプキンズ大学やEIAのデータを基にクリークス作成)