お金と投資をもっと身近に
facebook twitter
世界経済を揺るがす原油高とドル安
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

世界経済を揺るがす原油高とドル安

2008/5/23
数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍する石原順氏による外国為替市場レポート「外為市場アウトルック」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
facebook twitter 印刷する

5月21日に発表された4月のFOMC議事録は「大半の委員にとって25bpの追加利下げがギリギリの判断だった」という文言が示すとおりインフレリスクを強調する内容であった。同時に発表された2008年の経済成長見通しは1月時点の1.3-2.0%から0.3-1.2%に下方修正された。市場はスタグフレーション(不景気の物価高)を警戒し、22日の米国市場は株・債券・通貨のトリプル安となった。

このスタグフレーション・シナリオをあおっているのは昨今の原油高であるが、5月22日のニューヨーク原油先物相場は一時、1バレル=135ドルをつけ過去最高値を更新した。ゴールドマンサックスが今年後半の原油価格見通しを1バレル=141ドルとしているが、最近の原油価格の年内予想は 120~200ドルといった強気の見通しが多い。予想価格の根拠はよくわからないが、ホットマネーが原油市場に集中しているなかで「上がるから買う、買うから上がる」といった投機筋によるバブル相場が展開されている。

原油先物(日足)とMACDの売買シグナル


(出所:石原順、ブルームバーグ)

シカゴ市場のファンド関係者は一様に「この原油高の担保は北京オリンピックである」と語っている。中規模発電所の多い中国では停電対策のバックアップ電源用に軽油備蓄の需要が続いており、それは北京オリンピックまで継続すると言われている。また中国の地震被害によってさらなる特需の発生が噂されている。

資源国といわれる国の多くは市場経済のメカニズムが働いていない。それは原油の供給量の推移をみれば明らかである。現在の原油市場は供給や生産量に限りのあるなかで、中国の資源需用がマーケットを動かしているのである。投機筋の過熱売買ばかりが報道されているが、コモディティ市場はそもそも価格形成において他のマーケットより実需の比重が大きい市場である。上記の事情を考えると8月8日の北京オリンピックが、原油高やグローバルインフレの先行きを考える上で大きな転換ポイントとなるだろう。

原油供給量の推移(1970年~2007年)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

原油価格が高騰している中で、米国の株式市場のほうからはあまり弱気な声は聞こえてこない。ほとんど報道されていないが、ポールソン米財務長官は産油国を頻繁に訪問している。米国の金融機関は4月と5月に永久債や劣後債を発行してかなりの資本増強を行ったが、足りない分はSWFから調達する交渉をしているのであろう。原油高とドル安という世界経済の2大不安要素をかかえながらも、ポールソン米財務長官率いる大統領府金融作業部会が積極的に動いていることが、投機筋のリスクテイクを促す要因となっている。

原油相場との相関関係でドル相場が解説されることが多いが、(ドルとの相関関係が継続しているのはゴールドとシルバー)ここにきて原油価格との相関性は低下している。やはり外為市場に影響が大きいのは金利市場である。

上段:原油先物(黒)CRBインデックス(緑)ゴールド先物(黄)
下段:ドルインデックス(赤)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

5月に入って米国の金利市場はインフレと景気後退の綱引きからこう着状態となっているが、それを受けて外為市場はレンジ内での往来相場が展開されている。ボラティリティ(変動率)の推移からみると、この先レンジブレイクが起きると大きく相場が動くことになろう。ドル/円、豪ドル/円とも標準偏差ボラティリティはかなり低下し調整が進んでいる。ドル/円は102円と105円のレンジブレイクを待ってトレンドに乗っていく準備段階で、それがブレイクされるまでは欲張らない逆張りが有効であろう。

金利収益に重点を置く中期投資の投資家は、前回の連載で紹介したATRの推移に注目していただきたい。いわゆるキャリー通貨と呼ばれるドル/円や豪ドル/円などのクロス円の取引は、ATRが下がる過程で円安、上がる過程で円高となるケースが多い。

ドル/円(日足)
上段:標準偏差ボラティリティと売買シグナル[買い=緑・売り=赤]
下段:ATR(アベレージトゥルーレンジ20日)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(日足)
上段:標準偏差ボラティリティと売買シグナル[買い=緑・売り=赤]
下段:ATR(アベレージトゥルーレンジ20日)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/ドル(日足)
標準偏差ボラティリティと売買シグナル[買い=緑・売り=赤]


(出所:石原順、ブルームバーグ)

【この記事に対するアンケート回答はこちらから】

トウシルのオススメ記事

はじめよう株主優待
人気記事ランキングTOP
トウシル TOP
このレポートについてご意見・ご感想をお聞かせください世界経済を揺るがす原油高とドル安

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。

記事についてのアンケート回答確認

世界経済を揺るがす原油高とドル安

今回のレポートはいかがでしたか?
コメント
 
 
 

 

 

メールマガジン

直近1日の記事を配信します

配信:平日毎営業日配信
祝日・GW・夏季/冬季休暇 を除く

公式SNS

タイムリーな情報を
ゲットできます

配信:記事配信時 随時
facebookおよびTwitterには一部配信しない記事もあります

TOP
×
トウシル メールマガジン および SNSについて
メールマガジン 申込み

トウシルメールマガジンではレポートやコンテンツ等、直近1日の記事をお知らせします。
本メールは配信希望のお客様に平日毎日お届けしております。
リアルタイムでの情報取得は、公式SNS(facebook、twitter)もあわせてご利用ください。

  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。
メールマガジン サンプル
メールマガジンサンプル
  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。