意外?インド株式が注目されている理由

 日本国内だけでなく世界でデルタ型変異種の影響で新型コロナウイルスの感染が拡大しています。ただ、デルタ型が最初に確認されたインドでは、今春のピーク時と比較して感染が沈静化しています(図表2を参照)。

 インド各地ではロックダウン(移動制限)が解除され、経済活動が徐々に正常化に向かっています。「デルタ型(インド株とも呼ばれる)」の震源地とされるインドでは、4月に「感染爆発」が発生し、1日の新規感染者が60万人に達する事態となりました。

 実際の感染者や死亡者は統計上に表れないほど厳しい状況だったとされます。その後、5月上旬をピークに感染は落ち着きを取り戻し、足元の感染者数(週平均)は4万人台まで低減しています。

 こうした感染爆発を経て、「インド全体の抗体保有率が7割程度となり、『集団免疫』を獲得した可能性がある」(インド政府)との説が出てきました。総人口13.8億人超のうち約9億人超がすでに抗体を保持しているとされ、ワクチン接種の普及を待たずに感染者数が減少に向かっているインド独特の現象とされています。

 もちろん感染動向はいまだ予断を許しませんが、世界有数の大きな感染被害を被っただけに、インドは世界でいったんの「ポストコロナ」を最も鮮明にしている国と言えるかもしれません。

図表2:インドの感染動向:すでに「集団免疫」を獲得したのか

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年3月初~2021年8月25日)

 本来、インドは世界で比類のない高い経済成長が見込まれています。人口(約13.8億人)は右肩上がりに増え、2030年までに中国の総人口を凌ぐと見込まれています。また、2030年代には名目GDP(国内総生産)で米国や中国に次ぎ世界3位となる可能性も予想されています。

 経済成長の「原動力」として注目されているのは、生産年齢人口(15才以上64才以下の人口)の伸びと総人口に対する比率(割合)の上昇です。日本では1970年代から1990年代にかけ同比率がピークを迎え、中国では2020年代にピークを迎える予想ですが、インドは2040年代まで生産年齢人口とその比率が増加し続ける見通しです(図表3)。

 所得格差(貧富の差)の問題はあるにせよ、一人当り平均GDP(≒平均所得)はいまだ2000ドル程度と低水準である(増加余地が大きい)一方、平均年齢が若い(28才)ことで、「インドの高度経済成長期(GDP全体の高成長期)はこれからが本番」と言われています。

 コロナ危機でインドの2020年・実質GDP成長率は-7.3%と落ち込みましたが、IMF(国際通貨基金)の「世界経済見通し」によると、2021年には+9.5%、2022年は+8.5%と高成長率への回復軌道が見込まれています。

 労働人口の増加、所得(賃金収入)の増加、個人消費の拡大、インフラ整備の進展、外資企業の進出増加、生産性改善という好循環と高成長が期待されています。

図表3:インドの生産年齢人口は2050年まで増え続ける

出所:国連調査(UN World Population Prospects (June 2019))より楽天証券経済研究所作成