中国市場・注目セクターは中国ワクチン関連

 いずれにしても、各国、特に米中にとっては、ワクチンや治療薬の開発は喫緊の課題です。

 これまでの実績からいえば、ワクチンの開発には非常に長い年月がかかっていました。あくまで一般論ですが最短でも、基礎研究に数年、フェーズⅠに1年、フェーズⅡに2~3年、フェーズⅢに2~3年、承認申請に1年程度かかると言われています。

 一方、康希諾生物(06185)の開発スケジュールを見ると、すさまじい速さです。

 2020年に入り新型コロナウイルスが突如として流行、同社はすぐにワクチン(Ad5-nCoV、ウイルスベクターワクチン)の開発を始めています。わずか55日でフェーズⅠ、フェーズⅡの臨床実験を完了させています。そして、軍科院生物工程研究所と共同研究する形でフェーズⅢを実施、海外でもロシアなどでフェーズⅢを実施しました。

 最終的には開発から1年後の2021年2月、条件付きで承認されました。海外については、2021年2月にメキシコ、パキスタン、3月にはハンガリー、4月にはチリで緊急使用許可が下りています。

 しかし、中国のワクチン開発だけが異様に速いわけではありません。米国のファイザーや、モデルナ、英国のアストラゼネカのワクチンも同様な速さで開発を終えています。

 理由が何であれ、ワクチン開発は米中にとって極めて重要であるということです。

 康希諾生物のワクチンがどれだけ売れるのかについて、正確に予想することなどできません。せいぜい、最大限どこまで生産能力があるかを予想し、そこから利益予想をするのが関の山です。

 今回紹介する銘柄については、短期的に業績がどうなるかというようなことではなく、長期的な視点から、覇権争いを展開する米中両国にとって、国家戦略としてワクチン開発は非常に重要であるという点に注目したいと思います。

注目の中国株1:康希諾生物(06185)

 天津市に拠点を置く民営のワクチン開発メーカーです。宇学峰会長は1998年、カナダのマギル大学で微生物学に関する博士号を取得、カナダの製薬会社に就職し、そこでワクチン開発などの指揮を執ったものの帰国。発起人の一人となり、2009年に同社を設立しました。

 研究開発主体の会社で、2020年12月末時点で新型コロナ、エボラ出血熱、脳膜炎、百日咳、肺炎、結核、帯状疱疹などの13の疾病に関して16種のワクチンを開発しています。

 2017年にはエボラウイルスのワクチン開発に成功、2018年12月期にはわずかに売り上げ(113万元、1,921万円、1元=17円で計算、以下同様)が計上されましたが、そのほかの期間は売り上げゼロが続きました。

 2020年12月期に入り新型コロナワクチンで、ようやく1,854万元(3億1,518万円)の売り上げが立ちました。さらに政府からの補助金が7,705万元(13億985万円)あったのですが、人件費、研究費、減価償却費などがかさみ、3億9,664万元(67億4,288万円)の赤字となりました。

 もっとも、中国をはじめ各国で新型コロナワクチン使用は急速に増えており、2021年1-3月期の売上高は4億6,676万元(79億3,492万円)、赤字は1,411万元(2億3,987万円)に縮小しました。

 現在、開発を進めている16種のワクチンの内、新型コロナワクチンを除くと、髄膜炎球菌感染症、エボラ出血熱に関するワクチンが実用化間近にあります。そのほか、6種類のワクチンについて臨床試験中、あるいは臨床試験の申請中です。開発中のワクチンには実用化できそうなものが多い点も評価できます。

 新型コロナワクチンの生産能力は今年、少なくとも2億剤(回分)に達すると同社は発表しています。また、合弁事業、外部委託による生産が加われば、2023年には年産5億剤に達すると予想する市場関係者もいます。平均単価が8ドル程度まで下落したとしても、その時点では40億ドル程度(4,400億円、1ドル=110円で計算、以下同様)の売り上げが期待できます。

 今後、業績は飛躍的に拡大すると予想されます。