株価暴落の危機を救った中国当局

 株価急落は中国当局の政策によるのですが、さらなる暴落の危機を救ったのも中国当局でした。

 中国人民銀行は9日大引け後、預金準備率を0.5ポイント(一部例外もあります)引き下げると発表しました。今年に入り原材料価格の上昇が顕著となっており、零細企業の経営が悪化しています。こうした零細企業に対して銀行が十分な支援を行えるよう、預金準備率を引き下げるのだと当局は説明しています。

 実施は15日からですが、この日は4-6月期の経済成長率が発表される日でもありました。金融緩和しなければならないほど景気が悪いのかといった懸念もあったのですが、結果は7.9%成長で、市場コンセンサスよりも0.1ポイント低いだけでした。

 加えて、香港市場は中国国内の市場であり、当局にとって重要な資本市場です。その点がニューヨーク上場企業と香港上場企業との根本的な違いです。多くの投資家がそれに気づき始めたこともあって、香港市場は落ち着きを取り戻しています。

米中覇権争いがビジネスチャンスになる!注目セクターは?

 相場は米中覇権争いによって振り回されている感があります。

 今回の注目セクターは、覇権争いがビジネスチャンスに結び付きそうな新型コロナワクチン関連セクターです。

 具体的には、研究開発型のベンチャー企業で軍と共同でウイルスベクターワクチンを開発する康希諾生物(06185)、ドイツのバイオ医薬ベンチャーであるビオンテック社と共同開発を行い、グレーターチャイナ圏でのmRNAワクチンの独占販売権を有する上海復星医薬(02196)、投資先である北京科興中維生物技術(シノバック、NASDAQ:SVA、売買停止中)が不活化ワクチンを開発する中国生物製薬(01177)、親会社である中国医薬集団(シノファーム)が不活化ワクチンを開発する国薬控股(01099)、画期的な新型コロナ治療薬の開発を進める開拓薬業(09939)などをピックアップしました。

 まず、世界各国のワクチン接種状況をご覧ください。

表:世界のコロナワクチン接種回数

順位 国名 累計(億回) 構成比
1 中国 14.14 39.9%
2 インド 3.91 11.0%
3 アメリカ 3.35 9.5%
4 ブラジル 1.19 3.4%
5 ドイツ 0.84 2.4%
6 イギリス 0.81 2.3%
7 日本 0.65 1.8%
8 フランス 0.61 1.7%
9 トルコ 0.61 1.7%
10 イタリア 0.59 1.7%
  その他 8.70 24.6%
合計   35.40 100%
出所:Our World Data
注:2021年7月16日現在

 世界最大の人口を持つ中国が接種回数では他国を圧倒しています。

 中国国内で使用されるワクチンは、一部を除き中国国内で生産されたものです。

 工業情報化部が7月16日に発表したデータによれば、中国の新型コロナワクチン生産能力は年間50億回分に達しており、国内の累計供給量は14億回分、海外は5億7,000万回分に達しているそうです。ワクチン生産でも、中国が世界を席巻しています。