物流産業から成長株候補を探す~宅配便・産業貨物・倉庫業

【3】宅配便大手:成長性を評価できるが株価は必ずしも割安ではない

 Eコマース拡大により、国内の宅配便は、以下の通り、年々取り扱い個数が増え続けています。

宅配便取り扱い個数:1992年度~2019年度

出所:国土交通省

 宅配便大手、ヤマトHD(9064)(ヤマト運輸の持ち株会社)SGホールディングス(9143)(佐川急便の持ち株会社)が、その恩恵を受けています。ただし、両社が宅配便成長の恩恵を受けていることは、株式市場に知れ渡っており、両社とも株価は既に上昇し、PERなどで割安とは言えない水準にあります。

【4】産業貨物大手:日本通運(9062)の投資価値高いと判断

 日本通運は、産業貨物の最大手で、陸・海・空の総合物流ネットワークを国際展開している強みがあります。

 宅配便事業(ペリカン便)は日本郵政に売却して撤退済みなので、宅配便成長の恩恵は受けられなくなっています。昨年、宅配便の好調が続く中、コロナ禍の影響で一時産業貨物が低迷したため、宅配便大手の株価が上昇する中、日本通運の株価は低迷が続いていました。宅配便大手ヤマトHDやSGホールディングスと明暗を分けました。

 ただし、足元、産業貨物も急速に回復してきていることから、日本通運の株価も回復基調です。今でも、同社株価は予想PERで14倍であり、割安と判断しています。

【5】倉庫業:物流事業で最高益を更新する企業が増加

 倉庫業に、まだ”オールド産業”の印象を持ったままの投資家が多いため、物流事業で最高益を更新していても、株価はPERやPBRなどの株価指標で見て、きわめて割安なままの銘柄があります。

 倉庫業の古いイメージは「ただ、モノを保管するだけ」ですが、近年の倉庫業は違います。モノを保管、配送するだけではなく、さまざまな流通加工作業を行い、そこから高い付加価値を得ています。扱い量の拡大にともない、物流事業の収益が拡大し、最高益を更新するようになってきています。

 三井倉庫HD(9302)(株価2,559円)、住友倉庫(9303)(株価1,588円)、安田倉庫(9324)(株価950円)の3社に、割安な成長株として、長期投資していく価値が高いと判断しています。

三井倉庫HD・住友倉庫・安田倉庫の連結経常利益:2019年3月期~2022年3月期(予想)

  出所:安田倉庫の2022年3月期予想は楽天証券予想、三井倉・住友倉は会社予想。各社決算資料より作成

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