物流産業から成長株候補を探す~海運・空運

 コロナ禍で人の移動は制限されたままですが、物の移動は活発となっています。「人流」(人の移動)が衰退する中、物流が成長する時代となっています。

「人流」は、短期的にも長期的にも、伸びにくくなると思います。ワクチン接種の進んだ米国では、少しずつ人の移動が増えていますが、それは米国内に限られます。国際間の人の移動は制限されたままです。新興国まで含めて、世界全体でコロナが終息したと言える日が来るまで、国際間の人の移動は、回復しないでしょう。

 また、リモートワーク、リモート会議が世界中に普及した今、完全にコロナが終息しても、コロナ前の水準にビジネス出張が戻ることはないでしょう。以上の理由から、「人流」は成長しない時代になると思います。

 物流は、その逆です。短期的にも長期的にも、世界的に成長が続くと思います。コロナ禍で買い物に出かける人が減り、巣ごもり需要が拡大する中、Eコマースの成長が国内外で加速しています。Eコマースを支える、国内外の物流事業の成長が短期的に加速しています。

 コロナが去れば買い物に出る人が増えるため、一時的にEコマース拡大の勢いが低下するかもしれません。ただし、リアルショップよりもネットショップの方が、バラエティ豊富な品物を、自由に簡単に選べることを知った消費者は、リアルからネットへの流れを止めることはないと思います。長期的にも、Eコマース・物流の成長は続くと思います。

 というわけで、物流関連企業からは、成長企業が多数出ると思います。高成長企業とは言えなくても、安定的に最高益を更新する企業が増えています。

 物流に携わる産業として、海運・空運・陸運(宅配便)・陸運(産業貨物)・倉庫などがあります。私は、今、倉庫と陸運(産業貨物)が有望と考えています。空運には投資すべきでないと考えています。海運は短期的には良いが、長期的には要注意と思います。

【1】海運:短期的には良いが、中長期的な収益力に不安

 海運業は今、定期船の好調で、業績が拡大しています。定期船、特に北米航路の需給ひっ迫が長期化しています。貨物量増加と市況上昇の恩恵を受けています。

 ただ、この需給ひっ迫が何年も続くとは考えられません。米国でリベンジ消費が盛り上がり、中国からの輸入が急増する中、海運業のキャパシティが追いつかなかったため、一時的に需給ひっ迫が深刻になりました。ただ、リベンジ消費が一巡し、海運業界もキャパシティ拡大に動けば、いずれ定期船市況は沈静化するでしょう。

 不定期船については、まだ船腹(貨物積載スペース)過剰が完全には解消されていません。海運業界の過当競争体質は変わっていないので、短期的に好調が続く海運業界ですが、中長期的な収益力には依然として不安があります。

【2】空運:投資は避けるべきと判断

 空運業界では、輸出入貨物を運ぶ貨物便が好調です。貨物便は、需給ひっ迫の恩恵を受けています。

 ただし、日本航空(9201)ANAホールディングス(9202)の主力事業は、人を運ぶビジネスです。コロナ禍で人の移動制限が続いているため、厳しい業績が続いています。

 コロナ収束後も、業績の戻りは鈍いと考えられます。リモート会議の普及でビジネス客の戻りが鈍いと考えられるからです。従来から続いている、LCC(低コスト航空会社)との競争もあり、収益は伸び悩むと考えられます。したがって、短期的にも中長期にも日本航空とANAの投資魅力は乏しいと考えています。