人気の成長株は買いタイミングがむずかしい
令和時代は、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)・5G(第5世代移動体通信)・サービスロボットを活用し、ITサービスで急成長する企業がたくさん出ると思います。東証マザーズ・JASDAQなどに、有望な成長株候補が多数あります。
ただ、小型成長株には値動きの荒いものが多く、売買タイミングが難しいのが問題です。特に、誰もが熱狂する人気の小型成長株は,、急騰急落を繰り返すので要注意です。以下に、私が過去に売買してきた小型成長株の、典型的な株価変動パターンを描いたチャートを作りました。こちらをご覧ください。
乱高下する人気の小型成長株:高値づかみすると大変!(イメージ図)
上の例では、黎明(れいめい)期・急成長期・成熟期の3つのステージがそれぞれ5年続く成長企業をイメージしています。それぞれ、以下のようなステージです。
【1】 黎明期:利益は出ないが、将来、大きな夢がある時期です。
【2】 急成長期:実際に売上高・利益が大きく伸びる時期です。
【3】 成熟期:最高益の更新は続くものの、年率5%程度しか増益しなくなります。
このように、長期的に株価が大きく上昇する成長株でも、買いタイミングが悪いと、買った途端に株価が暴落することがあります。チャートで赤の星印をつけたところです。こうしたタイミングで買う破目にならないためには、成長株とは言っても株、価が急騰した直後に買うのではなく、株価が下がっている時、落ち着いている時に買うべきです。私がファンドマネージャーをやっていた時は、実際そのようにしていました。
割安な成長株はなかなかない。新日本科学に期待
高成長が期待される株は、だいたいPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)などの株価指標で高い水準まで買い上げられています。つまり、将来の成長をかなり織り込んだ価格になっています。そこからさらに株価が上がっていくためには、売上・利益が期待以上に伸びなくてはなりません。市場の期待を下回ると、最高益を更新していても、株価が大きく下がることもあります。
あまり投資家に人気がなく、PERで低く評価されている「成長株なのに割安」な銘柄があると良いですが、それはなかなかありません。しかし、よく探せば候補企業は見つけられます。「世の中の変化に取り残された”オールド企業”と思われているが、それは誤解で、実は世の中の潮流に乗って成長していく企業である」という企業を見つければ良いわけです。
その候補と考える企業は、さまざまな領域にあります。たとえば、物流産業がそうです。Eコマース拡大によって、物流は成長産業となっていますが、古い産業のイメージが払しょくされず最高益を更新していても、株価は「PERで割安」のままである銘柄が多数あります。
バイオ分野でも期待する企業はあります。たとえば、東証1部上場の新日本科学(2395)。7月7日の株価は1,021円で今期(2022年3月期)の予想PERは10.8倍と、割安と言える水準です。新日本科学は、国内外の製薬企業から、受託研究機関として、創薬支援・前臨床試験などを行っています。
医薬品業界では研究開発や創薬のスピードアップと効率化を目指したアウトソーシングが活発となっており、同社の受託業務に追い風が吹いています。海外の大手製薬企業から新型コロナワクチンや治療薬開発プロジェクトの受注が入っており、今後の成長が期待できると私は予想しています。
物流産業から成長株候補を探す~海運・空運
コロナ禍で人の移動は制限されたままですが、物の移動は活発となっています。「人流」(人の移動)が衰退する中、物流が成長する時代となっています。
「人流」は、短期的にも長期的にも、伸びにくくなると思います。ワクチン接種の進んだ米国では、少しずつ人の移動が増えていますが、それは米国内に限られます。国際間の人の移動は制限されたままです。新興国まで含めて、世界全体でコロナが終息したと言える日が来るまで、国際間の人の移動は、回復しないでしょう。
また、リモートワーク、リモート会議が世界中に普及した今、完全にコロナが終息しても、コロナ前の水準にビジネス出張が戻ることはないでしょう。以上の理由から、「人流」は成長しない時代になると思います。
物流は、その逆です。短期的にも長期的にも、世界的に成長が続くと思います。コロナ禍で買い物に出かける人が減り、巣ごもり需要が拡大する中、Eコマースの成長が国内外で加速しています。Eコマースを支える、国内外の物流事業の成長が短期的に加速しています。
コロナが去れば買い物に出る人が増えるため、一時的にEコマース拡大の勢いが低下するかもしれません。ただし、リアルショップよりもネットショップの方が、バラエティ豊富な品物を、自由に簡単に選べることを知った消費者は、リアルからネットへの流れを止めることはないと思います。長期的にも、Eコマース・物流の成長は続くと思います。
というわけで、物流関連企業からは、成長企業が多数出ると思います。高成長企業とは言えなくても、安定的に最高益を更新する企業が増えています。
物流に携わる産業として、海運・空運・陸運(宅配便)・陸運(産業貨物)・倉庫などがあります。私は、今、倉庫と陸運(産業貨物)が有望と考えています。空運には投資すべきでないと考えています。海運は短期的には良いが、長期的には要注意と思います。
【1】海運:短期的には良いが、中長期的な収益力に不安
海運業は今、定期船の好調で、業績が拡大しています。定期船、特に北米航路の需給ひっ迫が長期化しています。貨物量増加と市況上昇の恩恵を受けています。
ただ、この需給ひっ迫が何年も続くとは考えられません。米国でリベンジ消費が盛り上がり、中国からの輸入が急増する中、海運業のキャパシティが追いつかなかったため、一時的に需給ひっ迫が深刻になりました。ただ、リベンジ消費が一巡し、海運業界もキャパシティ拡大に動けば、いずれ定期船市況は沈静化するでしょう。
不定期船については、まだ船腹(貨物積載スペース)過剰が完全には解消されていません。海運業界の過当競争体質は変わっていないので、短期的に好調が続く海運業界ですが、中長期的な収益力には依然として不安があります。
【2】空運:投資は避けるべきと判断
空運業界では、輸出入貨物を運ぶ貨物便が好調です。貨物便は、需給ひっ迫の恩恵を受けています。
ただし、日本航空(9201)、ANAホールディングス(9202)の主力事業は、人を運ぶビジネスです。コロナ禍で人の移動制限が続いているため、厳しい業績が続いています。
コロナ収束後も、業績の戻りは鈍いと考えられます。リモート会議の普及でビジネス客の戻りが鈍いと考えられるからです。従来から続いている、LCC(低コスト航空会社)との競争もあり、収益は伸び悩むと考えられます。したがって、短期的にも中長期にも日本航空とANAの投資魅力は乏しいと考えています。
物流産業から成長株候補を探す~宅配便・産業貨物・倉庫業
【3】宅配便大手:成長性を評価できるが株価は必ずしも割安ではない
Eコマース拡大により、国内の宅配便は、以下の通り、年々取り扱い個数が増え続けています。
宅配便取り扱い個数:1992年度~2019年度
宅配便大手、ヤマトHD(9064)(ヤマト運輸の持ち株会社)・SGホールディングス(9143)(佐川急便の持ち株会社)が、その恩恵を受けています。ただし、両社が宅配便成長の恩恵を受けていることは、株式市場に知れ渡っており、両社とも株価は既に上昇し、PERなどで割安とは言えない水準にあります。
【4】産業貨物大手:日本通運(9062)の投資価値高いと判断
日本通運は、産業貨物の最大手で、陸・海・空の総合物流ネットワークを国際展開している強みがあります。
宅配便事業(ペリカン便)は日本郵政に売却して撤退済みなので、宅配便成長の恩恵は受けられなくなっています。昨年、宅配便の好調が続く中、コロナ禍の影響で一時産業貨物が低迷したため、宅配便大手の株価が上昇する中、日本通運の株価は低迷が続いていました。宅配便大手ヤマトHDやSGホールディングスと明暗を分けました。
ただし、足元、産業貨物も急速に回復してきていることから、日本通運の株価も回復基調です。今でも、同社株価は予想PERで14倍であり、割安と判断しています。
【5】倉庫業:物流事業で最高益を更新する企業が増加
倉庫業に、まだ”オールド産業”の印象を持ったままの投資家が多いため、物流事業で最高益を更新していても、株価はPERやPBRなどの株価指標で見て、きわめて割安なままの銘柄があります。
倉庫業の古いイメージは「ただ、モノを保管するだけ」ですが、近年の倉庫業は違います。モノを保管、配送するだけではなく、さまざまな流通加工作業を行い、そこから高い付加価値を得ています。扱い量の拡大にともない、物流事業の収益が拡大し、最高益を更新するようになってきています。
三井倉庫HD(9302)(株価2,559円)、住友倉庫(9303)(株価1,588円)、安田倉庫(9324)(株価950円)の3社に、割安な成長株として、長期投資していく価値が高いと判断しています。
三井倉庫HD・住友倉庫・安田倉庫の連結経常利益:2019年3月期~2022年3月期(予想)
成長株入門を読む!
成長株投資入門(その1):テンバガー狙うなら「チャート」を見よ
成長株投資入門(その2):成長株の3条件、前提が崩れたら損切り
成長株投資入門(その3):買いシグナルで買ったのに下がった時はどうする?
成長株投資入門(その4):東証マザーズ・グロース株投資の鉄則
HERE!成長株投資入門(その5):物流産業から成長企業を探す
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