今日は、「成長株投資入門(その1・2・3)」の続きです。その1~3でお伝えしたかったことは、成長株投資で失敗した時の「損切り」の重要性です。失敗銘柄からきちんと逃げられることが、大当たり銘柄で利益を伸ばしていくために必要と力説しました。

 今日は、小型グロース株の宝庫、東証マザーズ市場と、どうつきあっていったら良いか、私のファンドマネージャー時代の経験を踏まえた上で得た「鉄則」を、お話しします。

鉄則1:波に乗る

 東証マザーズ市場は、東京証券取引所が1999年11月に開設した「新興企業向けの株式市場」です。他の株式市場との違いは、上場基準が大幅にゆるいことです。赤字のままでも上場することができます。創業して間もない新興企業でも、マザーズの上場基準を満たせば上場できることがあります。新興企業に早く上場して、成長するための資金を調達する道を開くことが目的でした。

 こうした背景から、東証マザーズ・グロース株への投資は、高リスク高リターンです。期待された成長が実現せずに、暴落して上場廃止になる銘柄もあるし、急成長して株価が何倍にも跳ね上がる銘柄もあります。

 さて、このようなマザーズ・グロース株に投資する時、一番大切なことは何でしょう。

 ほんものの成長株をみきわめる銘柄選択力?…違います。銘柄選択力は重要に違いありませんが、それは一番大切なことではありません。一番大切なことは、波に乗ることです。少なくとも私がファンドマネージャーをやっていた2013年までのマザーズ市場では、そうでした。以下、東証マザーズ市場の2016年以降の推移をご覧ください。

東証マザーズ指数の月次推移:2016年1月末~2021年6月(9日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 ご覧いただくと分かる通り、マザーズ市場には、大きな波があります。2018年1月から2020年2月にかけて、東証マザーズ指数は半値以下に下がっています。ひたすら下げまくる市場でした。

 このような時は、どんなに一生懸命いい銘柄を見つけて投資してもダメです。いい銘柄も悪い銘柄も、なんでも売られるからです。下げが加速してきたら「三十六計、逃げるにしかず」。ホンモノの成長株かニセモノか考える前に、いったん売って頭を冷やした方が良いです。

 逆に、上昇の波に乗ると、おもしろいように儲かるのも東証マザーズ株です。2020年3月から2021年2月までご覧ください。マザーズ指数は2倍以上になっています。

 こんな時は、いい銘柄も悪い銘柄も上がります。買った途端に、株価が急騰してあっという間に2倍になっても、それがホンモノの成長株かどうかは分かりません。ただ波に乗っただけかもしれません。波が去ると暴落することもありますから、要注意です。