日経平均先物「踏み上げ」が日経平均上昇に寄与

 日経平均の上昇に、需給面で先物「踏み上げ」が寄与していたことは、本連載でたびたび指摘しました。先週の日経平均上昇にも踏み上げ【注】が関与していると思われます。

【注】踏み上げ
日経平均が下落すると予想して日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られること。

 それが、東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の推移から読み取れます。詳しく説明すると難解になるので、説明は割愛して結論だけ述べます。2つ覚えてください。

【1】東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れます。売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。

【2】東京証券取引所が発表している「裁定買い残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「買い建て」の変化が表れます。買い建てが増えると裁定買い残が増え、買い建てが減ると裁定買い残が減ります。

 それでは、2018年以降の日経平均と、裁定「売り残」「買い残」の推移をご覧ください。

日経平均と裁定売り残・買い残の推移:2018年1月4日~2021年3月12日(裁定売り残・買い残は2021年3月5日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 2021年3月5日時点で、裁定売り残は1兆2,021億円まで減少。一時約2.6兆円あった時と比べると大幅に減少しました。

 日経平均が下落すると予想して売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していくため、損失拡大を防ぐために先物の買い戻しを迫られたことがわかります。つまり、先物の「踏み上げ」が起こっていたことになります。

 注目いただきたいのは、上のグラフに矢印を書き込み「踏み上げ」と書いてあるところです。2カ所あります。2019年10~12月と、2020年6月~2021年3月です。ともに、日経平均が大きく上昇した後、裁定売り残高が大きく減少しています。ここで、「踏み上げ」が起こっています。