「グレートサイクル」と呼ばれる半導体業界の収益見通し

 図表1で示したフィラデルフィア半導体株指数(通称「SOX指数」)は、米系企業を中心とする半導体・半導体製造装置株(30銘柄)で構成される調整済時価総額加重平均指数です。

 同指数は2020年に約51%上昇し、S&P500指数(+16.3%)やナスダック総合指数(+43.6%)よりも好調でした。同半導体株指数は2021年に入っても7%上昇し他主要指数をしのぐモメンタム(勢い)をみせています。

 半導体業界の特徴として、株価が需給サイクルに先行しやすいとされます。スマホ、PC、ゲーム機、IoT、5G、クラウド、データセンター(サーバー)、FA、AI、EV(電気自動車)、自動運転車など、幅広いDX(デジタル・トランスフォーメーション)進展には、高機能・高速・大容量の半導体が不可欠です。また、その製造技術の需要は、コロナ禍が加速させた構造変化の後押しもあり、世界的に拡大しています。

 SIA(米国半導体工業会)は1月6日、2020年11月の半導体世界売上高が前年同月比7.0%増加(約394億ドル:約4兆円)し、10カ月連続でプラスを記録したことを発表しました。

<図表2:半導体株の収益見通しは急拡大中>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2017年初~2021年1月8日)

 世界でほぼ全ての業界がデジタル化を進めるなか、旺盛な需要は半導体産業の収益見通しを改善・拡大させています。

 図表2は、フィラデルフィア半導体株指数ベースとS&P500総合指数ベースの予想EPS(1株当たり利益)の推移を示したものです(市場予想平均/2017年初=100)。半導体産業全体の収益見通しは「グレートサイクル」(あるいはスーパーサイクル)と呼ばれるほど好調となっています。

 同半導体株指数を構成する主な銘柄としては、TSMC(ティッカーシンボル:TSM)、エヌビディア(NVDA)、ASMLホールディング(ASML)、AMD(AMD)、ブロードコム(AVGO)、テキサス・インスツルメンツ(TXN)、インテル(INTC)、アナログ・デバイセズ(ADI)、アプライド・マテリアルズ(AMAT)、クアルコム(QCOM)、マイクロンテクノロジー(MU)などが挙げられます。

 なお、米半導体株に分散投資することができる米国籍ETF(上場投資信託)として「ヴァンエック・ベクトル半導体ETF」(SMH)があります。

 同ETFの取引単価は233.61ドル(約2万4,300円)で比較的少額から半導体主要銘柄に分散投資できます。同ETFの年初来騰落率は+7.0%とフィラデルフィア半導体株指数と同様に好調を維持しており注目したいと思います(13日時点)。