新年の計は「年初」にあり?半導体株の好発進に注目

 新年の世界株高のなかで、日経平均株価は約30年ぶり高値を更新しました。とはいうものの、米国市場の長期金利上昇がいったん相場の上値を抑える可能性には要注意です。先週実施された上院のジョージア州決選投票を経て、民主党が大統領府、下院議会、上院議会を実質支配する見通しとなりました(トリプルブルー)。

 コロナ禍で積み上げられた過剰流動性に、大規模財政出動期待が加わったことでリフレ期待(物価と景気の押し上げ観測)が浮上。米債市場で試算される期待インフレ率(Break Even Rate)は、約2年ぶり水準となる2.09%に上昇。10年国債利回りも1.15%に上昇しました(11日)。

 当面は、金利を低位に安定させたい金融当局(FRB)が、金利上昇を抑制するための追加緩和策やメッセージ(市場との対話)を打ち出すか否かが注目されます。株式市場の総意(コンセンサス)である「金融緩和の長期化シナリオ」が崩れるなら、リスク資産の価格形成が影響を受ける可能性があります。

 なお、新年の米国市場における物色変化に特徴もみられます。上記したリフレ期待を受け、年初来騰落率でバリュー株(景気敏感株)指数が優勢となる一方、グロース株指数が劣勢となっています。

 こうしたなか、フィラデルフィア半導体株指数に象徴される半導体関連株が「好発進」を鮮明にしていることに注目したいと思います。

<図表1:新年の米国市場で半導体株が好発進>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年1月13日)

「グレートサイクル」と呼ばれる半導体業界の収益見通し

 図表1で示したフィラデルフィア半導体株指数(通称「SOX指数」)は、米系企業を中心とする半導体・半導体製造装置株(30銘柄)で構成される調整済時価総額加重平均指数です。

 同指数は2020年に約51%上昇し、S&P500指数(+16.3%)やナスダック総合指数(+43.6%)よりも好調でした。同半導体株指数は2021年に入っても7%上昇し他主要指数をしのぐモメンタム(勢い)をみせています。

 半導体業界の特徴として、株価が需給サイクルに先行しやすいとされます。スマホ、PC、ゲーム機、IoT、5G、クラウド、データセンター(サーバー)、FA、AI、EV(電気自動車)、自動運転車など、幅広いDX(デジタル・トランスフォーメーション)進展には、高機能・高速・大容量の半導体が不可欠です。また、その製造技術の需要は、コロナ禍が加速させた構造変化の後押しもあり、世界的に拡大しています。

 SIA(米国半導体工業会)は1月6日、2020年11月の半導体世界売上高が前年同月比7.0%増加(約394億ドル:約4兆円)し、10カ月連続でプラスを記録したことを発表しました。

<図表2:半導体株の収益見通しは急拡大中>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2017年初~2021年1月8日)

 世界でほぼ全ての業界がデジタル化を進めるなか、旺盛な需要は半導体産業の収益見通しを改善・拡大させています。

 図表2は、フィラデルフィア半導体株指数ベースとS&P500総合指数ベースの予想EPS(1株当たり利益)の推移を示したものです(市場予想平均/2017年初=100)。半導体産業全体の収益見通しは「グレートサイクル」(あるいはスーパーサイクル)と呼ばれるほど好調となっています。

 同半導体株指数を構成する主な銘柄としては、TSMC(ティッカーシンボル:TSM)、エヌビディア(NVDA)、ASMLホールディング(ASML)、AMD(AMD)、ブロードコム(AVGO)、テキサス・インスツルメンツ(TXN)、インテル(INTC)、アナログ・デバイセズ(ADI)、アプライド・マテリアルズ(AMAT)、クアルコム(QCOM)、マイクロンテクノロジー(MU)などが挙げられます。

 なお、米半導体株に分散投資することができる米国籍ETF(上場投資信託)として「ヴァンエック・ベクトル半導体ETF」(SMH)があります。

 同ETFの取引単価は233.61ドル(約2万4,300円)で比較的少額から半導体主要銘柄に分散投資できます。同ETFの年初来騰落率は+7.0%とフィラデルフィア半導体株指数と同様に好調を維持しており注目したいと思います(13日時点)。

日本市場の半導体関連株も「押し目買いに分があり」

 日本市場でも、米国市場の物色を映すかのような半導体関連株の好発進がみられます。図表3は、「MSCI日本半導体・半導体製造装置株指数」の年初来騰落率を他株価指数と比較したものです。米国市場と同様、半導体関連株がバリュー株指数やグロース株指数より優勢となっていることがわかります。

 自動車業界ではトヨタ自動車、ホンダ、日産が、海外ではVW、フォード、GMなどが「車載用半導体の不足」を理由に一部車種の減産(生産減少)に追い込まれています。

 ほぼ全ての産業でDX化が進むなか、従前からみられたシリコンサイクル(半導体需給の波)とデジタル革命進展に伴う需要拡大(グレートサイクル)でかつてない業績相場となりそうです。

<図表3:日本市場の半導体株も好発進している>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年1月13日)

日本の半導体関連株、騰落率ランキングTOP10

 図表4では、国内の主な半導体関連株(10銘柄)を年初来騰落率の降順にチェックしました。日本の半導体業界は、製造装置、試験装置、シリコンウエハー(部材)に関わる製品分野で国際競争力や市場シェアが高い企業が多いことが特徴です。

 図表4で示した全ての銘柄の年初来騰落率がTOPIX(東証株価指数)や日経平均より優勢です(13日時点)。「株価が上昇しているので買いにくい」との声もあります。

 参考までに、「トレンドは友(Trend is your friend)」、「相場は相場に聞け」、「続く流れに逆らうな」、「ついていくのが儲けの道」などトレンドフォロー(順張り)を説く相場格言もあることをご紹介します。

 コロナ禍が収束するまで、もしくはアフターコロナ(コロナ後)を見据えても、2021年の半導体関連株は業績好調で堅調が見込めそうです。WSTS(世界半導体市場統計)によると、2021年の世界半導体市場規模は前年比8.4%増の4,694億ドル(約49兆円)と過去最高を更新すると予測されています。

 相場反落時に半導体関連株がツレ安する場面では「押し目買いに分があり」と考えています。

<図表4:日本の主な半導体関連株(参考情報)>

*上記は参考情報であり、個別銘柄を推奨する目的のものではありません。
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年1月13日)

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