金(ゴールド):2021年の脱炭素は、分断を発生・深化させ、有事のムードを強める

 “脱炭素”にとって、2021年は、どのような年になるでしょうか。“脱炭素”の本来の趣旨であるCO2の排出量を削減することを目的とした、これまでの前提を覆す本質的な議論が始まる年になると、考えられます。

 前提を覆す本質的な議論は何を生むでしょうか。抽象的に言えば、“脱炭素”が進展することで起きる変革を受け入れる“進む人”と、受け入れない“とどまる人”を生むと考えられます。それでは“進む人”と“とどまる人”が生まれれば、何が生まれるでしょうか。良くも悪くも“分断”です。

 分断の良さは、議論が深まる点です。このため、分断は一概に悪とは言えません。問題は、分断が生じた時、利権や過去の習慣・慣例にとらわれない、本来の目的を果たすための正しい議論ができるかどうかです。

 正しい議論ができなければ、お互い、妥協点を見出せず、分断は深まり、やがて、分断がお互いの憂さ晴らしのはけ口の場になります。これは、悪い分断です。

 脱炭素の本質的な議論が本格化するとみられる2021年は、脱炭素起因の分断が、良性か悪性かが、明らかになる年といってもよいと思います。このことは、日本だけでなく、世界各国でも同様です。

 世界規模で、脱炭素起因の分断の悪性が目立つようになった場合、つまり、利権や過去の習慣・慣例にとらわれ、遅々として“脱炭素”に関わる本質的な議論が進まない場合、期待した成果が得られそうにない、このまま期待を寄せてよいのだろうか? などと、“脱炭素”を取り巻く環境が不安定化する可能性があります。

 特に、“脱炭素”を目玉政策としている主要国のリーダーが、“脱炭素”を思うように推進できなくなった場合、そのリーダーはけん引力不足とみなされ、一般大衆からの支持が低下し、その国を取り巻く全体的な環境が悪化しかねません。

 このような、2021年に起き得る“脱炭素”を取り巻く環境の不安定化は、金(ゴールド)相場の上昇要因の一つ、“有事のムード”を強める一因になると、筆者は考えています。

図:2021年の金(ゴールド)相場を取り巻く環境(筆者イメージ)

出所:筆者作成

図:NY金(ゴールド)先物(期近 月足 終値) 単位:ドル/トロイオンス

出所:ブルームバーグより筆者作成

※2021年の金(ゴールド)相場の見通しの詳細を「金(ゴールド)市場2021年10大予測:2021年の年末、2,100ドル超えも?!」 で述べています。