なぜ通貨市場は動きが止まっているのか?

 ゴールドやビットコインは、FRB(米連邦準備制度理事会)のQEインフィニティ(無限大介入)やパンデミック下の負債急増(経済破綻の救済のための巨額の赤字支出)にそれなりに反応している。しかし、通貨の市場だけは不気味な沈黙を続けている。

ゴールド先物(日足)

出所:石原順

 ドル/円に関していえば、固定相場のようになってしまっている。目先の相場は米金利の上昇を受けてドルが買われているが、年間を通してみると、異常なほどボラティリティは低い。為替レートのボラティリティは通常、米国の景気後退時に大幅に上昇することを考えると、現在の安定性は驚くべき事態と言えよう。

ドル/円(日足)

出所:楽天MT4・石原順インディケーター

米10年国債金利の大統領選挙後の動き

出所:ゼロヘッジ

 なぜ、このような事態が起こっているのか? FRBの社会主義政策、ドルスワップラインの寛大な提供、世界中の大規模な政府財政対応などが原因とされているが、本当の原因は金融システムが崩壊し、金融政策が国家管理になっているからだ。

 焦ることはない。大きな世界的なマクロ経済の不確実性の環境では、為替レートは大きく変動するはずである。中央銀行は神様ではない。人間がやっているので、相場操縦には必ず限界が来る。どのような操縦であれ、これまで市場メカニズムによって完全に打ち砕かれてきたからである。

 世界中の金融政策が同じで、債券市場が国家管理となっているので、通貨はもう動かないという声もある。

 それに対して、マーク・ファーバーは次のように述べた。

「FRBが債券市場で大部分を爆買いした場合、理論的には資産価格は月に打ち上げられ、そこから最終的には地面すれすれで落ち着くだろう。債券市場が行き詰まると、価格調整で残る手段は唯一、米ドルの価値となる」(マーク・ファーバー)