「過去との比較」に過信してはいけない

 よく聞かれるのが過去に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の時の株価の動きとの比較です。当時の株価の動きをもとに、「そろそろ下げ止まる。逆に今が買い時」と1月下旬の株価急落のときに、言っていた人もいましたが、今となってはむなしい響きになってしまっています。

 過去の似たような状況と比較して、株価の下げ止まりの時期や水準を予測しようとする動きはよく見られますが、この判断を過信するのも危険です。なぜなら、今起こっていることは、過去とは似ているように見えて、実は大きく異なっているかもしれないからです。

 筆者が2008年のリーマン・ショックのときにばく大な損失を生じさせたときも、まさにそうした状況だったことを今でも覚えています。

 株価が下げ続けているときに、当時株式投資の分析について信頼を置いていた人から、「過去10年間で常にこの水準で下げ止まっている。今が買い時だ」というアドバイスを受けました。すでに、かなり買っていて含み損が出ていましたが、確かにその通りになっていたので、この言葉を信じて買い増しをしました。

 その結果、過去10年で下げ止まった水準では下げ止まらずに、さらに株価は大きく下落し、最後は投げ売りで何とか一命を取りとめました。 

 今回も、今までとは似ているが大きく違う、ということになれば、過去の経験則が当てはまらない可能性がありますので十分に注意してください。