新型肺炎の影響が日増しに拡大しています。株式投資を行う個人投資家にも大きな影響を及ぼしています。こんなとき、どのように考え、行動すべきなのでしょうか?

専門家が発する断定的情報を鵜呑みにするな!

 今は税理士業務の繁忙期。通常通り仕事をしないわけにはいきませんが、都心部の人出が明らかに少なくなっているのを感じます。

 筆者は基本的に心配性です。逆に必要以上に心配して疲れてしまうこともありますが、逆に、今でも楽観的な考えで日々を過ごしている人が圧倒的に多いことに驚くばかりです。

 思えば、2月の初めは専門家の人たちが「インフルエンザと同じようなものだから過度な心配は不要」とか「笑って栄養を摂って良く寝て免疫力を高めておけば大丈夫」などと呑気なことを言っていました。しかし、今はこの惨状です。

 株式投資においても、「大した影響はない」とか「景気悪化懸念が生じても財政出動や金融緩和をするから問題ない」という声が以前は聞こえていましたが、もしそれが本当であれば、今週初めの世界同時株安のような動きは起きないはずです。

 新型肺炎の影響がどうなるかは誰にも分かりません。ですから専門家が発する断定的な情報は鵜呑みにしない方が良いと思います。

「過去との比較」に過信してはいけない

 よく聞かれるのが過去に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の時の株価の動きとの比較です。当時の株価の動きをもとに、「そろそろ下げ止まる。逆に今が買い時」と1月下旬の株価急落のときに、言っていた人もいましたが、今となってはむなしい響きになってしまっています。

 過去の似たような状況と比較して、株価の下げ止まりの時期や水準を予測しようとする動きはよく見られますが、この判断を過信するのも危険です。なぜなら、今起こっていることは、過去とは似ているように見えて、実は大きく異なっているかもしれないからです。

 筆者が2008年のリーマン・ショックのときにばく大な損失を生じさせたときも、まさにそうした状況だったことを今でも覚えています。

 株価が下げ続けているときに、当時株式投資の分析について信頼を置いていた人から、「過去10年間で常にこの水準で下げ止まっている。今が買い時だ」というアドバイスを受けました。すでに、かなり買っていて含み損が出ていましたが、確かにその通りになっていたので、この言葉を信じて買い増しをしました。

 その結果、過去10年で下げ止まった水準では下げ止まらずに、さらに株価は大きく下落し、最後は投げ売りで何とか一命を取りとめました。 

 今回も、今までとは似ているが大きく違う、ということになれば、過去の経験則が当てはまらない可能性がありますので十分に注意してください。

多くの個人投資家が撃沈するたった1つの誤った行動とは

 今年1月初旬や1月下旬は、株価が短期的に大きく下落しました。その時に腕に自信のある個人投資家は「株価が下がっている中を買い向かう」という行動に出ていました。

 しかし筆者は、上昇トレンド銘柄の押し目買いを狙うときを除けば、株価下落を買い向かうということはしません。

 なぜなら、株価が下げ止まらなかったら大きな損失を被り、撃沈してしまうからです。

 アベノミクス相場が始まって7年超、長期上昇相場が続いている間は、株価の一時的な下落を買い向かうことが成功につながりました。

 しかし、長期上昇相場が終わり、長期下落相場に転じていたなら、一時的な株価下落のつもりで買った株が、さらなる下落でみるみる含み損を膨らませてしまい、手も足も出なくなってしまいます。

 少なくとも株価が下げ止まって反発を始めるまでは、安易に手を出さないのが無難です。「落ちてくるナイフをつかむな」とは有名な投資格言ですが、筆者はこれを忠実に守ってきたからこそ今まで生き残ってこれたと思っています。

とりあえず売ってキャッシュ比率を高めておけば生き残れる

 株価の下落が大きくなり、世界同時株安の様相を呈してくると、業績がどうこう、というよりは、株を保有すること自体をリスクと感じる投資家が増えてきます。その結果、ほぼ全ての銘柄が大きく下落するようになってしまうのです。

 では、株価が下落して止まらないならばどうすればよいのでしょうか? とりあえず保有株を売却してキャッシュ比率を高めておくことを筆者はお勧めします。そうすれば、株価がいくら下落しても損失の拡大は防げるからです。

 そして、筆者がいつも申し上げているとおり、株価下落の初期段階、例えば25日移動平均線を割った時点で売却しておけば、かなり高い株価位置で売却が可能です。

 その上で、株価が下げ止まって落ち着いてから買い直せばよいのです。

 今は、通常モードの考え方では危険だと思います。リーマン・ショックを上回るような激震さえも想定した「最悪の事態」に備えるくらいでよいと思います。

 およそ100年周期で訪れているといわれている流行病、現代の株式市場ではその影響がどのくらい株価にインパクトがあるか、経験したことがありません。

 何が起こるか分かりません。だからこそ、どうなってもおかしくないという前提で行動するべきです。今はいかに安く買って利益を得るか、ではなく、いかに大きな損失につながる行動を避けるか、を第一に考えるようにしてください。