原因1

親の介護は想定外だった

 同居していない家族の介護は、家計への影響を忘れがちです。田中さんも自分の親は大丈夫だろうと安心しきっていました。

 現在、家族を介護している日本人は「50〜59歳」の割合が最も高くなっています(総務省「平成29年就業構造基本調査」より)。つまり、30歳前後で子どもが生まれた方は、その子どもが成人となって就職する前後の時期と、親の介護が発生する時期が重なることが分かります。

就業者の介護従事者割合(年齢別)

出所:総務省「平成29年就業構造基本調査」

 公的介護保険制度の趣旨には、「できるだけ在宅で、自立できるよう支援する」とあります。在宅で介護、または要支援者向けの介護予防サービスを受けた人は約384.4万人、施設に入所してサービスを受けた人は約95.2万人です(厚生労働省の「介護保険事業状況報告(月報・暫定)」令和元年9月版[同年12月6日発表])。

 つまり介護・支援者の4人に1人は施設を利用しており、要介護5(最も介護が必要とされる水準)に近いほど、施設利用率は上がる傾向にあります。

 また、介護期間の平均は「5年弱」となっています(生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」)。

 人生100年時代と言われる昨今、介護期間の長期化が予想されるため、将来の生活設計には、親の介護も考慮しておく必要があるのです。

原因2

老後の資産形成は「子育て後」と考えていた

 機会を見て老後の備えを考え始めようとしていた田中さんですが、普段の生活や子育てに追われているうちに、つい後回しに。その結果、いま正に、大きな問題として立ちはだかることになってしまいました。

 現役世代は仕事だけでも忙しいものですが、子育て中はさらに大変でしょう。しかし、老後のお金の準備をするなら、時間を味方につけて長期的に取り組むことが重要です。