6:株式は「投資」の、外国為替は「投機」のリスク

ゼロサムゲームのリスクに、リスクプレミアムはない

「ハイリスク・ハイリターンの原則」が、それとなく世の中に拡がっているせいか、為替のリスクにも追加的なリターンがあると思い込む向きがあり、特に円よりも高金利な通貨に「リスクに見合う高いリターン」があると錯覚する向きが多い。

 しかし、外国為替市場は、ゼロサムゲームの構造になっており、しかも、通貨の交換比と金利がセットでやりとりされる場なので、どの通貨と金利の組み合わせがよりリターンが高いのかは、原則として五分五分と言わざるを得ない。高金利通貨が儲かるとも、低金利通貨が儲かるとも言えない。

 為替のリスクはいわば「投機」のリスクだ。

 筆者には「投機が悪い」という価値観は一切ないが、リスクを取ってもリターンが増えにくいという意味で、投機のリスクを取る事は資産形成に有利ではない。

 一方、株式投資のような「資本」を提供する世界では、将来予想されるキャッシュフローを現在価値に割り引いて価格を決める際に、割引率の中にリスクに対するプレミアムが含まれる可能性が大きい。こちらは、「投資」のリスクだと考えていいだろう。

 投機のリスク、投資のリスクのいずれを取るかは個人の自由だが、原則論的には、資産の形成には投資のリスクの方が有利だと言える。