4:金融機関に「相談」してはいけない!

あなたは親切な「ご提案」に即座にダメ出しができますか?

 駅前の銀行のポスターなどを見ると、「相談しよう」(多くは無料)と顧客を誘うものが多い。また、雑誌のマネー特集などでも、「金融機関の窓口などで、納得がいくまで話を聞いてみよう」といった結論が提示されている場合もある。

 決めるのは自分なのだから、無料なら相談してもいいのではないか。あるいは、自分は顧客なのだから、金融機関が親身に相談に応じるのは当然だ、とお考えの方もいらっしゃるのではないか。

 はっきり言って、「考えが甘い」と言わざるを得ない。もう一言付け加えるなら、自分は客なのだから丁寧に扱われて当然だという「お客様意識」は心に隙を作りやすい。後者は、日本の消費者にありがちな弱点の一つだろう。

 親切に相談を受けると、わずかではあっても、心理的には相手に借りができる。この心理状態で、商品の「ご提案」を受けると、提案を明確に否定できる根拠と度胸がなければ、つい商品を購入してしまうことになりやすい。

 提案された金融商品に対して、直ちに明確なダメ出しができるのは、投資家の中でもごくごく一部の人だけだろう。

 特に、相手が自分の口座がある銀行の場合、銀行側は顧客の懐具合をよく知った上で「ご提案」を繰り出してくるので、断りにくい。

 少なくとも、運用の相談は、商品を売る可能性のない人を相手に行うべきだ。具体的には、金融機関と縁のないFPなど、ということになる。

5:投資よりも、貯蓄です!?

人生の大問題(=老後)を運用で解決しようと思うのはマトモだと思いますか?

 たとえば、現役時代の支出の7割くらいの生活を退職後に確保しようとすると、厚生年金がある会社員で手取り収入の2割前後、国民年金だけの自営業者やフリーランスの場合3割前後を貯蓄しなければならない計算になる場合が多い(「貯蓄」といっても、運用内容は「投資」でもよい)。

 運用に一定の利回りを期待することができれば、この必要貯蓄率を計算上は下げることができるが、運用の利回りは不確実であり、これをアテにするのは危険だ。

 まず、必要な貯蓄を実行しながら、持っている金融資産で許容範囲の中でリスクを取って運用を行うことは構わない。運用で大きな損得が出た場合は、あらためて必要貯蓄率を計算するべきだ。運用の利益は、得られる前からアテにするのではなく、獲得してからその後の行動(貯蓄額など)の変化に反映させるべきだ。

「貯蓄から、投資へ」というキャッチフレーズが口にされることの多い業界にあって、いささかの言いにくさを感じるのだが、「投資よりも、貯蓄です!」という言葉の方にこそ、現実的な責任感が伴っているように思う。