※本記事は2017年1月24日に公開したものです。

 以前、あるところで、「資産運用の新常識」というテーマを与えられて講演する機会があった。

 資産運用に関して「正しいこと」が、そう簡単に変化するわけではないので、「新常識」という演題は看板に偽りありかもしれないのだが、「意外だけれども正しい」話をすべきなのだろうと理解した。

 その結果、現時点での「新常識」を10個お話しした。

 以下が、そのリストである。いくつ「そうだ!」とご納得いただけるだろうか。

「意外かもしれないけれども大切な」10の運用常識

1:投資家の「タイプ」は運用方法に無関係
2:資金の使用目的は運用方法と無関係
3:運用に目標額は要らない
4:金融機関に「相談」してはいけない!
5:投資よりも、貯蓄です!?
6:株式は「投資」の、外国為替は「投機」のリスク
7:長期投資でリスクは減らない
8:低成長でも株式は儲かっておかしくない
9:99%の投資信託は検討に値しないクズです
10:運用商品は3つ知っていれば十分です!

 順にご説明することにしよう。

1:投資家の「タイプ」は運用方法に無関係

「運用が非効率的でもいいと思うタイプ」の人はいますか?

「高齢者には、インカム収入が多い運用」とか「初心者には、バランスファンド」といった具合に、投資家には「タイプ」があって、タイプに合った運用方法や運用商品がある、といったイメージで運用が語られる場合が多いが、これは正しいのだろうか。

 はっきり言ってしまうと、正しくない。

 例えば、仮にリスク当たりの期待リターンが最もいい「リスク運用商品」(単独ないし組み合わせで)があれば、運用経験や年齢に関係なく、皆、その運用商品を選ぶことが合理的になるのではないだろうか。わざわざ、これよりも効率が悪い商品に投資したいと思う人はいるまい。

 違いは、運用総資産額とその中でいくらリスクを取るかの違いによって生じる、「リスク運用商品」に対する投資額だけだ。「リスクの大きさは、運用商品の種類によってではなく、リスク運用商品の購入額でコントロールする」という原則は、意外に盲点になりやすい。

「投資家のタイプ別に、適した運用商品がある」という話は、運用商品の売り手側が商品を売るために作ったフィクションなのだ。効率のいい運用商品だけが売れたのでは、手数料を稼ぐことができないからだ。投資家の側でも、この作り話に付き合う必要はない。