2024年8月5日に日経平均株価が歴史的な下落を記録するなど、株式市場が荒れています。日本の中央銀行である日本銀行が政策金利を引き上げ、米国で景気後退懸念がにわかに台頭していることが株価暴落の引き金です。

 9月優待株に関しても、多くの銘柄が急落し、株価が落ち着くまで時間がかかりそうです。特に為替市場で急速な円高が進んでいることもあり、海外で収益を上げる外需企業や円高で訪日外国人の消費落ち込みが不安視されるインバウンド(訪日外国人)関連の内需株などは不安定な値動きが続くかもしれません。

 ただ、好業績にもかかわらず全体相場の悪化で株価がツレ安している9月優待株に関してはある意味、割安で仕込めるチャンスと考えることもできます。

 長期的な株価チャートをよく見て、過去に株価が下げ止まった価格帯などを調べ、全体相場の動向にも細心の注意を払った上で優待株投資を行いましょう。

値上がり益も狙えて、優待内容も大満足な年初来高値更新の9月優待株

 外食、小売、サービス企業に多い株主優待株は物価が下落するデフレ時代は薄利多売になりがちで業績が低迷。株価もいまひとつ、ぱっとしませんでした。

 しかし、資源高や円安によるインフレ物価高時代に突入すると、値上げ効果や個人消費拡大で業績が劇的に好転。株価が上昇している人気優待株もたくさん生まれました。

 そこで、楽天証券の「株主優待検索」で9月優待株382銘柄を人気順に並べ替え。

※楽天証券の株主優待検索より。本特集の株価、株数当たりの投資金額、予想配当利回りなどは全て2024年8月6日終値で計算。以下同

 楽天証券の「国内株式」→「株価検索」で上位銘柄に検索をかけ、2024年7月以降に「年初来高値」をつけて株価が上り調子の銘柄を厳選しました。

※楽天証券「株主優待検索」より


 

「年初来高値」とは、その年につけた最高値のこと(1~3月までは比較期間が短いので、昨年1年間も含めた最高値=「昨年来高値」に注目します)。

 ただ8月上旬に株式市場を襲った暴落で、年初来高値更新銘柄の株価も急落。上値にしこり(株を購入した人の戻り売り圧力)ができてしまい、今後、株価が再浮上するのに苦労しそうな銘柄も出てきました。

 そこで、好業績に加え、円高や米国の景気後退懸念の影響をあまり受けそうにない内需系企業を中心に厳選。暴落からの戻りも速そうで、優待内容も充実した株を探しました。

株価の上昇力が抜群なのは年4回優待のラウンドワン(4680)!

 8月上旬の暴落後も長期的な上昇トレンドが崩れていないイチ押し銘柄はアミューズメント施設運営のラウンドワン(4680)

 同社はお得感を感じやすい年4回優待を導入しており、9月・12月・3月・6月末に100株保有でラウンドワン施設利用割引券500円分と健康ボウリング教室・レッスン優待券1枚が贈呈されます。

 株主優待株に多い外食、小売、アミューズメント関連などの内需企業は少子高齢化で国内需要が落ち込む中、海外進出に活路を求めています。

 海外でも業績を伸ばすことができる企業が「勝ち組」になりやすい中、ラウンドワンは米国で大成功を収めており、前期2024年3月期に続いて今期2025年3月期も過去最高の売上高・利益を更新する見込み。

 米国では人気のクレーンゲームや日本のゲームカルチャー、日本食も堪能できる同社のアミューズメント施設が若者に大人気。衰退する米国ショッピングモールの救世主という声も上がるほど事業規模が拡大しています。

 急速な円高の進行で米国事業の収益悪化が心配な面はあるものの、同社は今後も1,000億円を投じて、米国店舗を現在の4倍に当たる200店舗まで増やす計画。

 米国では2025年夏に高級和食レストラン事業を開始する予定で、アミューズメント事業の成功体験を武器に海外事業の高成長が続きそうです。

 今期2025年3月期の予想配当利回りも株価の急落で2.13%まで上昇しており、ここ3年は大幅な増配が続いている点も魅力大です。


 

2.イエローハット(9882)

 自動車好きにおすすめしたいのが、カー用品販売国内2位のイエローハット(9882)

 9月・3月末に100株保有で、買い物割引券3,000円分と「油膜取りウォッシャー液2.5L」1本と交換できる商品引換券が贈呈されます。

 同社はオイルなど消耗品販売や収益性の高い車検事業が好調で、今期2025年3月期の売上高は過去最高を更新する見込み。利益面でも2023年3月期の最高益更新が視野に入っています。

 同社の魅力は無借金経営で毎年増配を繰り返し、今期の予想配当利回りが2.78%に達する高配当株であること。

 株価は今期の業績上方修正期待もあって、2024年7月24日にここ10年間でも最高値となる2,367円の年初来高値を更新。円高や米国景気後退の影響を受けにくい内需株のため、8月上旬の全体相場の暴落後も急速に値を戻しています。

 株価が上昇し過ぎている面もあるので、いったん2,000~2,100円まで調整したところで押し目買いを狙うのがいいかもしれません。

 ただ、株価が会社の保有する純資産の何倍まで買われているかを示したPBR(株価純資産倍率)は0.99倍とまだまだ割安。株主優待や高利回りの株主配当金をもらいながら長期保有に徹すれば、今後も大きな値上がり益が見込めるかもしれません。


 

3.サンリオ(8136)

「ハローキティ」などキャラクター商品の企画・販売やライセンス事業が米国や中国で絶好調な「海外勝ち組」のサンリオ(8136)も、株価上昇とお得な株主優待を一石二鳥で狙える有望株です。

 同社は株価の長期的な値上がりのせいで投資するには高額な資金が必要でした。しかし2024年4月1日に株式3分割を行ったことで、100株を約31万8,500円で購入できるようになりました。

 株式分割に伴い、同社は優待制度を実質的に拡充。

 今回の2024年9月末優待からは、9月・3月末に100株保有で、東京都多摩市にある「サンリオピューロランド」、大分県にある「ハーモニーランド」に1日1名が無料で入場できるテーマパーク共通優待券1枚、全国のサンリオショップで使える買い物券1,000円分が贈呈されます。

 同社は、キャラクターのライセンス販売が国内や北米、中国で絶好調。前期の2024年3月期には過去最高の営業利益を計上。今期2025年3月期も最高益更新や連続増配が見込まれています。

 コロナ明けの2023年3月期以降、業績が急拡大しており、株価も2024年7月22日に上場以来の最高値となる3,285円を更新。8月5日の暴落では一時2,622円の安値をつけましたが、翌6日には18%近く急浮上し、ほぼ暴落前の株価水準を回復しています。

 国内のインバウンド向け販売や海外での人気を考えると、まだまだ成長余地が豊富なため、全体相場が再び急落したときを狙った押し目買いなどが有効かもしれません。


 

4.タカラトミー(7867)

 玩具メーカー大手のタカラトミー(7867)もヒット商品の売り上げが絶好調で、8月上旬の急落後の株価の戻りが比較的速そうな優待株です。

 メインの優待は3月末に100株でオリジナル「トミカ」2台セット贈呈というもの。

 それとは別に9月・3月末に100株以上で通販サイト「タカラトミーモール」での買い物10%割引も受けられる買い物割引優待があります。

 同社にはアジア圏や国内での「ベイブレード」人気再燃という好材料があり、今期2025年3月期も前期に続き過去最高益更新予想。国内外で絶好調なガチャ事業という安定収益もあります。

 株価も2024年7月2日に上場来高値3,253円をつけるなど絶好調で、8月上旬の急落後も8月6日には3,000円台まで戻しています。

 長期的に見ると、株価がかなり高値圏まで急上昇し過ぎている面もあります。月足チャートの長期移動平均線が位置する価格帯や、2,500円といったキリのいい価格帯など、現在の株価よりかなり下値に指値注文を入れて、じっくり待つ方がいいかもしれません。


 

5.ベルーナ(9997)

 長年低迷していた業績が好転し、株価に反転上昇の兆しが見えるのがカタログ通販のベルーナ(9997)です。

 9月・3月末に100株保有で、1,000円分の通信販売割引券、「ベルーナオンラインストア」で使用できる優待ポイント1,000円分、お米・お菓子などから選べる1,000円相当の自社取り扱い商品のうち1点を選べます。

 また、同社が運営する「グランベルホテル」などのホテルや飲食店「銀座のステーキ」で利用できる割引券2,000円分も贈呈されます。

 同社はアパレル関連の通販ビジネスの低迷で、株価もここ数年、底ばいで推移していました。しかし、事業多角化の一環として手掛けてきたホテル事業がインバウンド需要で成長源に早変わり。急速な円高進行でインバウンド相手のホテル事業に陰りが出る可能性には十分注意が必要ですが、今期2025年3月期は大幅な増収増益に加えて、大幅増配を予定しています。

 2024年7月9日にはホテル事業の月次売上高が好調なことを受けて、年初来高値827円をつけたものの、8月上旬の全体相場の暴落で600円台後半まで値下がりしています。

 ただ1株当たり利益の何倍まで株価が買われているかを示したPER(株価収益率)は8.3倍、PBRも0.48倍と、株価は非常に割安で、比較的、下値余地が限られている点が魅力かもしれません。

 今期の予想配当利回りが4.23%に達する高配当株のため、ホテル事業の成長次第では今後も株価の再浮上に期待が持てそうです。