盗難撲滅は横断的な対応で実現できる

 金属盗難の問題は単なる盗難なのではなく、買い取る業者、その金属を溶解する業者、それを運ぶ業者、そしてそれを保管する業者、さらにはそれを使用する業者がいて成り立っているといえます。点と点を結んでできた面を一網打尽にしなければ、盗難を撲滅することができないでしょう。「横断的な取り組み」が欠かせません。

図:国内で発生している金属流通上の問題(一例)

出所:筆者作成

 買い取り業者に認証制度を設けることは、関連する条例がある自治体で実施されています(検討中の自治体もあり)。こうした認証制度を、溶解する業者、運送する業者、保管する業者、使用する業者、輸出する業者など、金属流通に関わる業者全てに導入することにより、盗難品の流入や流通を減少させることができると考えます。

 その結果、それが抑止力となり、盗難を減らす効果も期待できます。

 足元、金属の盗難や盗難品の流入・流通を法律で規制することを望む声が各所で上がりつつありますが、これらはまとまる必要があると筆者は考えています。流通に関わる上記の業界が横断的に手を組み、声を大きくしていくことで法制化の機運を大きくしていくことができると考えます。

 溶解と保管に関わる認証制度について、筆者は以下のようにイメージしています。LBMA(ロンドン貴金属市場協会)が行っている溶解業者の認証制度、LME(ロンドン金属取引所)が行っている倉庫業者の認証制度をまねます。

図:溶解・保管の段階でできる認証制度

出所:筆者作成

 認証された溶解業者は、疑わしくない品のみを溶解し、一定の品質の流通しやすい半製品を作り、それに刻印を施します。認証された倉庫業者は、認証された溶解業者から納入された金属のみを保管します。そして、その倉庫業者が発行する、金属の種類や数量、保管場所が明記された証書である「倉荷証券」を売買できる先物市場を創設します。