3 セイノーHD(9076・東証プライム)

「カンガルー便」で知られる西濃運輸を中核とする物流会社です。製造関連分野の構成比が過半数近くを占めています。車両数は約2万6,000台、輸送拠点は700拠点超、顧客数は約86万社とされています。利益率の高いロジスティクス事業や貸切輸送の売上比率向上に注力しています。

 また、トヨタ自動車や日野自動車のディーラーとして自動車販売事業も行っています。日野自動車ディーラーではトップの販売台数実績となるようです。ほかに、物品販売事業や不動産賃貸事業も展開しています。

 2024年3月期営業利益は234億円で前期比17.9%減となっています。自動車販売事業はメーカーの生産台数回復で増収増益となりましたが、主力の輸送事業が物量の減少などによって足を引っ張る形になっています。

 2025年3月期は309億円で同32.0%増となる見通しです。5年ぶりの改定となる新運賃表「24年運賃」を6月にリリース予定で、輸送事業における適正運賃収受の裾野を広げていく計画のようです。なお、年間配当金は前期比横ばいの100円を計画しています。

 配当方針は、2022年3月期まで配当性向30%を目標としていましたが、2023年3月期にはDOE2.4%と配当性向30%いずれかの高い金額を目安にすると変更、そして、2024年3月期にはDOE4.0%以上へとさらに変更しています。

 その結果、2024年3月期配当金は前期比44円もの増配となっています。大幅な最終赤字とならない限り配当水準は維持されることになります。また、ROE(自己資本利益率)8.0%実現に向けて(2024年3月期は3.3%)、自己株式の取得を強化していくともしています。

4 武田薬品工業(4502・東証プライム)

 国内製薬業界のトップ企業となります。がん、希少疾患、血漿分画製剤、神経精神疾患、消化器系疾患の五つのビジネス領域に注力しています。2019年1月、アイルランドの製薬大手シャイアーの買収を完了、買収総額は円換算で約6.2兆円と、日本企業として過去最高額のM&A(買収や合併)となりました。

 これにより、事業規模は世界トップ10に仲間入りすることになりました。約80の国・地域で事業を展開しています。現在開発中の経口オレキシン2受容体作動薬「TAK-861」は第3相試験を上半期中に開始予定です。

 2024年3月期コア営業利益は1兆549億円で前期比11.2%減となりました。成長製品や新製品がけん引して売上収益は拡大しましたが、円安に伴う販管費や研究開発費の増加が重しとなりました。2025年3月期は1兆円で同5.2%減の見通しです。

 米国のVYVANSEをはじめ、後発品と競合する製品の減収で売上収益が伸び悩むほか、新製品の上市に係る投資やデータ・デジタルおよびテクノロジーへの投資がかさむようです。年間配当金は前期比8円増の196円を計画しています。

 これまで10年以上、年間配当金180円を維持する方針を貫いてきましたが、2024年3月期は8円増配の188円配当を実施しています。会社側では株主還元として、毎年の年間配当⾦を増額または維持する累進配当の⽅針を掲げており、2025年3月期の増配計画も市場ではサプライズと受けとめられました。

 また、自己株式の取得は適切な場合に取り組むとしています。強固なキャッシュフローが、足元の利益と比較して(構造改革費用計上などにより実勢ベースの2024年3月期EPSは36.7円を計画)高水準の配当金を実施できる背景となっています。

5 丸井グループ(8252・東証プライム)

 首都圏を地盤とするファッションビルの大手企業ですが、小売事業は従来の百貨店業態から転換が進み、現在ではテナントからの賃料収入が中心となってきています。テナントも物販型から体験型へシフトさせています。また、D2C(自社で企画・製造した商品をECサイトで直接販売)のテナントに関しては、売り場の運営も受託しています。

 利益面では、エポスカード利用によるリボ・分割手数料、キャッシング利息などを中心としたフィンテック事業が主力となっています。カード会員数は2024年3月末段階で759万人となっています。

 2024年3月期営業利益は410億円で前期比5.8%増となっています。テナント収入やイベント収入の増加など小売り事業が順調に推移しています。フィンテック事業も手数料収入増加に加えて、ポイント費用が減少したことで下半期にかけて急回復となっています。2025年3月期は450億円で同9.7%増の見通しです。

 小売り事業ではテナント収入の増加で2桁増益を見込み、フィンテック事業も加盟店・割賦手数料やサービス収入の増加で増益を想定しています。年間配当金は前期比5円増の106円を計画しています。

 2023年3月期までは配当性向55%を還元方針としていましたが、2024年3月期からはDOE8%メドに方針を変更しています。2025年3月期は13期連続増配の予定ですが、2024年3月期には59円から101円に配当水準が大きく高まる形になっています。

 連続増配を続けているほか、長期安定的な増配の実現を目指すともしていることで、今後配当水準が低下することなく、むしろ引き上げられていく可能性は高いでしょう。また、6月1日から9月30日を取得期間として、発行済み株式数の5.86%に当たる1,100万株、200億円を上限とする自社株買いの発表もしています。