決算発表本格化の中、中東情勢の落ち着きや金融引き締めへの警戒感後退で反発

 直近1カ月(4月22日~5月17日)の日経平均株価(225種)は終値ベースで3.6%の上昇となりました。ゴールデンウイークを挟む期間となったほか、2024年3月期の決算発表が集中したタイミングでもありましたが、4月19日にかけて大きく調整した反動も強まり、期間中は緩やかな上昇トレンドが続く形になっています。

 決算発表を受けての個別物色に関心が集中したことで、全体相場の変動率(ボラティリティ)は低下する方向ともなっています。なお、この期間(4月22日~5月17日)のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は4.6%の上昇で、初の4万ドル台乗せを達成しています。

 4月後半から5月の4連休前にかけては、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会、4月30日、5月1日)で想定以上のハト派姿勢が示されたほか、日本銀行の金融政策決定会合(4月25、26日)でも「金融政策の現状維持」が決定されました。中東情勢の落ち着きもあり、買い安心感の強まりによってリバウンドの展開となりました。

 また、外国為替市場では、日銀の政策決定会合直後に円売りが強まり、一時34年ぶりとなる1ドル=160円台にまでドル高円安が進んだことなども話題になりました。連休明け後は3万8,000~3万9,000円のボックスレンジでの推移となっています。5月15日にかけて主要企業の決算発表が連日続いたことで、日経平均の方向性は乏しくなりました。

 年内利下げ期待再燃に伴う米国の長期金利低下、株高などは日本株にとっても支援材料となりました。注目された15日発表の米CPI(消費者物価指数)が市場予想通りに伸び率の鈍化傾向を示したこともプラス材料と捉えられました。

 一方、日本政府・日銀による為替介入実施の観測によって、円安ドル高が一服したことは、日本株の上値抑制要因につながったとみられます。なお、2024年3月期の上場企業の純利益は前期比18%増と3年連続で過去最高となった一方、2025年3月期は4%減と5年ぶりの減益が予想されると試算されています。

好決算や株主還元強化の銘柄は上昇、増益記録途絶えたニトリは失望売り

 個別株ではこの期間、決算発表を受けて明暗が分かれる展開になっています。想定以上の好決算発表のほか、増配や自社株買いなど株主還元強化を打ち出した銘柄などに評価が高まりました。

 半導体関連ではレーザーテック(6920)ディスコ(6146)ルネサスエレクトロニクス(6723)などが上昇、決算内容もポジティブに捉えられたほか、前回期間中に下げ幅が大きかった反動も強まったもようです。住友林業(1911)ダイキン工業(6367)コーセー(4922)アシックス(7936)コナミグループ(9766)三越伊勢丹ホールディングス(3099)なども決算がポジティブサプライズにつながりました。

 半面、住友ファーマ(4506)ジェイテクト(6473)ヤマトホールディングス(9064)コニカミノルタ(4902)スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)などは決算が嫌気されて大きく売られました。ニトリホールディングス(9843)も連続経常増益記録が途絶えたことで、失望感が強まる形になりました。

日米の金融政策が引き続き焦点、ネガティブインパクトに注意

 4月22日には米半導体大手エヌビディアが決算発表を予定しています。エヌビディアの決算発表後の株価動向は、日米の半導体株の動向、ひいては全体相場の行方を左右するものとなり得ます。仮にサプライズを伴うポジティブ決算となれば、東京株式市場でも再度、半導体株が市場を席巻するような相場展開になるものと考えられます。

 ただ、エヌビディア株は年初から8割強の上昇、ここ1カ月でも約2割の上昇となっており、決算のハードルは極めて高い印象があります。短期的な出尽くし感が先行することで、物色の矛先がハイテク・グロース株から内需・バリュー株にシフトしていく状況は想定しておきたいところです。

 なお、年内には半導体市況の好転、関連企業の収益回復が本格化していくとみられることから、中期的な半導体株のポジティブな見方に変化はありません。

 日米の金融政策も引き続き焦点となってきます。米国では6月11~12日にFOMCが開催されます。6月利下げ開始の可能性は極めて低くなっている状況ですが、市場では、年内には利下げが行われるとの見方がコンセンサスになっています。

 6月FOMC後のFRB(米連邦準備制度理事会)議長会見などで、可能性は低いとみられるものの、仮に年内利下げ開始が否定されるようならば、ネガティブサプライズとなるでしょう。

 6月13~14日には、日銀の金融政策決定会合が開催されます。6月会合での利上げ実施の可能性は低いとみられますが、長期国債の購入減額などがアナウンスされる可能性は残ります。その場合、タカ派志向の強まりとして市場ではネガティブに捉えられる可能性が高いでしょう。また、足元ではイエレン米財務長官が為替介入に否定的な見解を示しているため、為替介入が行いにくくなってきている印象があります。

 一段の円安が進行する状況となれば、円安抑止策として利上げが実施される可能性は高まるでしょう。また、食品インフレが目先一段と強まるようであれば、9月の自民党総裁選を控えて円安是正への政治圧力も高まるものとみられます。

 2024年3月期の決算発表が一巡しましたが、セクター別でみると、今期の収益が改善して高い増益率が計画されているものとして、電気機器、化学、医薬品、精密機器、非鉄金属などが挙げられます。一方、今期経常利益が減益に転じる予想となっているのは、電力・ガス、石油、鉄鋼、輸送用機器、空運などとなっています。

 中期的な株価の方向性を見る上で、この点は押さえておく必要があるでしょう。とりわけ、前期までの決算では株主還元策の強化が焦点となっていましたが、今期以降は還元策改善の動きも一巡して、業績そのものの注目度が高まるものとみられます。日銀政策リスク(円高反転リスク)を考慮すると、化学、医薬品、非鉄金属などのセクターが妙味と考えます。