2桁の収益成長継続見通しの高配当利回り銘柄

 2024年3月期の決算発表が一巡したタイミングは、機関投資家も一通りの業績精査を終え、あらためて好決算発表が買い直される局面であると考えます。とりわけ、収益拡大が続く見通しであるにもかかわらず、株価の割安感の残る銘柄などは格好のポートフォリオ組入対象候補となってくるでしょう。

 2024年3月期に続き、2025年3月期も2桁の営業増益を続ける見通しの高配当利回り銘柄をスクリーニングしています。

 3.5%以上の配当利回り(2025年3月期ベース)がある銘柄の中で、2024年3月期実績、2025年3月期見通しともに2桁の営業増益銘柄を選定しています。選定銘柄は総じて、利下げ先送りによる米長期金利高止まりリスク、日銀の今後の政策変更による円高反転リスクなどにも耐え得る銘柄と判断されます。

(表)連続2桁営業増益見通しの高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り (%) 5月17日終値 (円) 時価総額 (億円) 前期増益率 (%) 今期増益率 (%)
5076 インフロニア・ホールディングス 4.26 1,407.5 3,868 15.0 15.6
6406 フジテック 3.88 4,257.0 3,507 25.4 24.2
8174 日本瓦斯 3.78 2,447.5 2,853 15.3 14.7
4208 UBE 3.76 2,928.0 3,109 38.5 20.2
8425 みずほリース 3.69 1,085.0 2,658 24.4 19.0
注:増益率は営業増益率、今期は会社計画

銘柄選定の要件

  1. 配当利回りが3.5%以上(5月17日現在)
  2. 時価総額が2,500億円以上
  3. 2024年3月期実績、2025年3月期見通しともに営業2ケタ増益
  4. 3月期本決算

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 インフロニア・HD(5076・東証プライム)

 インフロニア・ホールディングスは2021年に前田建設工業、前田道路、前田製作所が経営統合して発足した準大手の建設会社です。積極的なM&A(買収や合併)で事業領域を拡大し、建設のほか、道路舗装、建設機械、インフラ運営事業などを手掛けています。

 公共インフラを民間企業が運営するコンセッション事業のトップランナーとも位置付けられ、仙台空港など現在6事業を展開しています。1月31日には、風力発電事業を展開する日本風力開発を完全子会社化しています。

 2024年3月期営業利益は510億円で前期比15.0%増となりました。受注回復や利益率の向上で土木セグメントが大幅増益になったほか、価格転嫁効果などで舗装セグメントも増益に大きく寄与した形です。2025年3月期は590億円で15.6%増の見通しとしています。土木分野は前期の反動減を見込んでいますが、大型工事の完工などで建築事業が大幅増益に転じる予想です。

 ちなみに、建築工事の受注高は2024年3月期に過去最高水準となっています。また、再生可能エネルギー案件と開発案件の売却予定から、インフラ運営事業も大幅増益となる見込みです。

 2024年3月期年間配当金は前期比5円増の60円とし、2025年3月期は60円配の継続を計画しています。配当性向は30%以上を目標としており、今期予想配当での配当性向は39.0%となります。2025年3月期までの中期計画では、自己株式取得400億円以上としていましたが、2024年3月期までに取得計画を前倒し達成しています。

 政策保有株の売却進展などがあれば、追加の自社株買いなども期待できるでしょう。建設セクターの中では、高水準の受注残などに裏打ちされた業績への安心感が強い銘柄といえます。

2 フジテック(6406・東証プライム)

 フジテックはエレベーターをはじめとした昇降機の専業企業です。国内では第4位と位置付けられているようです。24の国と地域で事業を展開しており、アジア市場に強みを持っています。営業利益の7割強はアジアで稼いでいます。

 また、売上の5割強は改造・修理、メンテナンスなどのストック売上で占められているため、収益の安定感が強いことも特徴となります。とりわけ、インド全土への販売拡大に向けて現地生産能力の増強などに注力しています。

 2024年3月期営業利益は145億円で前期比25.4%増となっています。売上高・利益ともに過去最高を更新しました。価格改定効果なども加わり、日本やインドを含む南アジアが増益となって全体をけん引する形となったようです。2025年3月期は181億円で24.2%増の見通しとしています。

 新中期計画開始に伴う固定費増で日本が減益となる見込みですが、南アジアや前期引当金計上の反動による東アジアでの収益拡大、欧米の収益回復などを想定しているようです。日本では新標準機種開発に伴う先行投資がかさむもようです。

 2024年3月期配当金は前期比80円増の155円、2025年3月期は10円増の165円を計画しています。配当性向は80.5%の高水準となりますが、新中期計画では、配当性向80%を目安とし、機動的に自己株式取得なども行っていく計画です。ストック売上による強固なキャッシュフロー創出力が高い株主還元を実施できる要因といえるでしょう。

 ちなみに、中期計画では、2029年3月期の営業利益を440億円とする高い水準を目標にしています。短期的には、中国市場の回復などが株価のカタリスト(相場を動かすきっかけ)になり得ると考えられます。