3 日本ガス(8174・東証プライム)

 日本ガスは、LPガス、都市ガス、電力の小売販売を展開しています。販売エリアは関東、山梨・静岡となっています。2024年4月現在、顧客数は194万6,000件、2024年3月期のLPガス販売量は29万79トン、都市ガスは36万2,890トンです。物流コストが他社比で低く、競争力の源泉ともなっています。

 電気事業では東京電力とリレーションシップを構築し、相対で電源を安定調達しています。既存ガス顧客におけるセット販売の拡大などに注力しているようです。

 2024年3月期営業利益は174億円で前期比15.3%増になりました。記録的高温の影響でガスの販売量は減少しましたが、原料価格の低下で粗利益率が改善しました。電気事業は販売量、利幅ともに拡大しました。2025年3月期は200億円で14.7%増の見通しと過去最高益更新を見込んでいます。

 LPガスは高気温のマイナス影響軽減で販売数量の増加を見込んでおり、電気は引き続き顧客数の増加を想定しています。顧客獲得費用の減少など販管費の減少も見込んでいるようです。

 2024年3月期年間配当金は75円で前期比10円増。2025年3月期は92.5円で17.5円増を計画しています。配当性向は73.0%の水準となります。会社側では、2024年3月期から2026年3月期までの3年間で、株主還元475億円(配当300億円+自社株買い175億円)を計画しています。1年目は配当金85億円、自社株買い59億円で、そのうち約30%を還元しました。

 会社側では、不必要な株主資本は持たずに株主還元するという資本政策であり、2026年3月期以降にかけても、高水準の株主還元が期待できると考えます。

4 UBE(4208・東証プライム)

 UBEは、コンポジット、ナイロンポリマー、カプロラクタム、ファインケミカル製品、合成ゴムなどの樹脂・化成品事業を主力とした化学メーカーです。ディスプレイ材料に用いられるポリイミド、リチウムイオン電池材料となるセパレータなどの機能品事業、プラスチック成形機などの機械事業、医薬中間体製造なども手掛けています。

 海外ではスペインやタイに主要な製造拠点を構えています。マクセルとの合弁会社、宇部マクセルで、リチウムイオン電池用セパレータの設備を増強すると5月に発表しています。

 2024年3月期営業利益は224億円で前期比38.5%増となっています。主力の樹脂・化成品事業は全般的な販売価格の低下で減収減益となりましたが、バイオメタン製造向け脱炭酸膜の販売が好調だった機能品事業、アフターサービスが堅調だった機械事業、医薬のロイヤリティ収入増加などがけん引役となりました。

 2025年3月期は樹脂・化成品事業の大幅な回復から、営業利益は20.2%増の270億円を見込んでいます。ナイロンポリマーは食品包装用フィルムなどの需要回復、コンポジットは自動車生産の回復効果が期待できるようです。ライセンス収入増加なども織り込んでいるようです。

 2024年3月期年間配当金は前期比10円増の105円、2025年3月期は5円増の110円を計画しています。配当性向は36.2%となります。株主還元に関して、安定的な配当の継続を基本方針とし、DOE(株主資本配当率)2.5%以上、3カ年平均の総還元性向30%以上を目標としています。

 2024年3月期のDOEは2.6%であり、今後、大幅な減配の可能性は低いと考えられるでしょう。ほか注目点としては、2024年度~2025年度に機能品事業で増産目的の設備投資計画が多く予定されています。その後の売上成長の高まりが意識されます。

5 みずほリース(8425・東証プライム)

 みずほリースは、みずほフィナンシャルグループの持分法適用会社となるリース大手企業です。2024年3月期末営業資産残高は2兆8,589億円、バランスの取れた資産ポートフォリオとなっています。設備投資に対する財務ソリューションに強みを持ち、船舶・鉄道車両のリースや建設機械のベンダーファイナンスプログラムなど、他社に先駆けた取り組みなども多く行っています。

 2024年5月、業務提携関係にあった丸紅に対して第三者割当増資を実施、丸紅は20.0%の株式を保有することになり、同社は丸紅の持分法適用会社にもなります。

 2024年3月期営業利益は395億円で前期比24.4%増となりました。営業資産の着実な積上げ継続によって不動産・環境エネルギー事業を中心に大幅増益となったほか、2023年6月に連結化したRent Alpha社の寄与で海外・航空機事業も伸長しました。2025年3月期は470億円で19.0%増の見通しです。

 不動産などのコア分野、環境エネルギーや航空機などのグロース分野を中心に営業資産残高を積み上げ、また、アライアンス戦略などの新たな取組推進によって、増益基調を続ける計画となっています。

 2024年3月期年間配当金は前期比45円増の192円配当、2025年3月期は1:5の株式分割を考慮すると、1.6円増配の40円配当を計画しています。長期間連続増配を続けており、現在の配当利回り水準の高さは特筆できます。この点ではNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の有望な投資対象とも捉えられます。

 目先の注目ポイントは、丸紅との資本業務提携効果の表面化でしょう。総合商社の国内外のネットワークや人財・事業開発力などを活用することで、事業機会や投資機会の拡大を図っていく可能性は高いでしょう。