今日の為替ウォーキング

今日の一言

虎の尾をつかんだ者は、うかつに手を放せなくなる

Black Dog

 FRBの今年の利下げは確実としても、その明確な開始時期は示されていない。金融政策決定プロセスにおいて経済データを重視すると表明しているFRBは、インフレ目標に向けた進展が不十分であることを示す情報が入ってきた場合には、利下げ時期を遅らせる可能性が高い。1月になって発表された米国の経済指標は、雇用統計、CPI(消費者物価指数)、小売売上高のいずれも予想以上の強さを示した。

 ウォラーFRB理事は、「インフレが再上昇しなければ、FRBは今年中に利下げを行う可能性がある」との見通しを示しながらも、3月の利下げには慎重な姿勢を示している。

 ウォラー理事は、FRB内のインフルエンサーとも呼ばれ、それまでタカ派寄りだったパウエルFRB議長の考えを利下げ支持に変えた人物と噂されている。利下げを否定したわけではないが、今回の発言は、FRBが利下げに対してやや慎重になっていることを示唆している。

 金利市場は、FRBが今年6回、合計1.5%利下げすると想定しているが、ウォラー理事は、12月FOMC(米連邦公開市場委員会)のドットチャートの中心予想である今年3回、0.75%の利下げを支持しているようだ。今年のFOMCは8回開催される。1月の金利据え置きは確実とすると、今年中に6回利下げを行うには、3月からスタートしなければほぼ間に合わない。これが早期利下げの根拠になっている。しかし3回の利下げであれば、スタートは6月、あるいは9月まで時間の余裕がある。

 FRBはインフレを低下させると同時に米国経済のハードランディングを回避して、ソフトランディングへと誘導しようとしている。しかし、ソフトランディングに必要なのは、景気刺激策よりも、安定した実質金利である。マーケットの利下げ期待は行き過ぎ感があることは否定できない。

 今のFX市場で起きているのは、 FRB利下げという文脈の中でのポジション修正だ。FRB政策が転換してドル高/円安トレンドに回帰したわけではない。

今週の注目経済指標

出所:楽天証券作成