中国は希少資源・レアアースとどう向き合ってきたか?

 1992年、中国改革開放の総設計師と呼ばれた鄧小平が中国南部を視察した際、「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」と主張し、その戦略的意義、レアアースという資源の重要性を強調しました。

 レアアースとは、再生不可能な戦略的資源。

 これが中国政府の従来からの立場で、今になっても変わりません。2011年3月に行われた全国政治協商会議の場で、孫振宇委員が語った次の言葉がそれを如実に表しています。

「統計によれば、中国のレアアース埋蔵量は全世界の30%だが、中国が現在世界最大のレアアース輸出国であり、世界全体における生産と貿易の90%を提供している。近年、中国は国内法に基づいて、レアアース産業に対して必要な管理と制限措置を科している」

 この国策に基づき、中国レアアースの埋蔵量と生産量は、2015年に約42%、約88%、2020年には37%、58%と生産量を削減してきていると同時に、輸出量も制限してきています。

 そして、2021年1月、中国工業情報化部が「レアアース管理条例」(意見公募版)を公表しました。同部は、国益と戦略資源産業の安全を守る観点から、レアアースを統一的に管理する必要があること、法律に基づいてレアアースの生産経営秩序を規範化する必要があること、レアアースの採掘、抽出、分離だけでなく、備蓄、流通、二次利用、輸出などを含むサプライチェーンの全体管理を行う必要があることを説明しています。 

 また、中国にとって経済安全保障がとうの昔から議論されてきているように、輸出規制に関しても最近はじまった話ではありません。実際、「中国輸出禁止・輸出制限技術目録」が最初に発表されたのは2001年にさかのぼり、その後、2008年、2020年に改訂され、今回が3回目の改定となります。中国経済が紆余曲折を経ながらも成長し、米中間の貿易摩擦や先端技術を巡る攻防が激化し、脱炭素の流れが強まる中で、今回、中国がレアアースという希少な戦略的資源の禁輸に踏み切ろうとしているという経緯はおさえておく必要があると思います。突然降ってきた話ではないということです。

 今回は、中国レアアース禁輸の背景について解説しましたが、次回は、その意図(目的)について理解を深めるべく扱おうと思います。