テーパリングが世界の株式市場に与えた影響:2013~2014年の経験

 前回、テーパリングが話題になり、実際に実行されたのは2013~2014年でした。テーパリングに絡んで、3回世界株安が起こりました。以下をご覧ください。

日経平均とNYダウの動き比較:2012年末~2014年末

出所:2012年末の値を100として指数化

【1】2013年5月:バーナンキ・ショック

 当時、FRB(連邦準備制度理事会)議長だったバーナンキ氏が「将来、テーパリングが必要になる」と発言しただけで、世界中の株が急落して日経平均も売られました。この時、世界景気は好調で、バーナンキ氏の発言以外に日本にも世界にもとりたてて悪材料はありませんでした。米国の金融政策に世界中の投機資金がきわめて神経質になっていることがわかりました。

【2】2014年1月:テーパリング開始

 バーナンキ氏の後を引き継いでFRB議長になったイエレン氏が最初にやったのが、テーパリングの開始でした。この時も、世界的に株が下がりました。ただし、この時はさまざまな不安がミックスした複合ショックでしたが、根っこには米国がテーパリングを始めることへの不安がありました。

 当時株安材料となっていたのは、以下4点です。
(1)テーパリングショック(FRB議長就任前にハト派として知られていたイエレン氏が議長就任後すぐにテーパリングを開始したショック)
(2)新興国不安(ドル高余波で過重債務を抱えるアルゼンチンなど新興国通貨が急落)
(3)米景気不安(記録的寒波の影響で米景気が一時的に停滞)
(4)日本の消費税が2014年4月に5→8%へ引き上げられることへの不安

【3】2014年10月:テーパリング終了

 2014年1月に開始されたテーパリングは予定通り、10月で完了しました。これをもって、米国のQE3(量的緩和第3弾)は終了しました。この時も、世界的に株が下落。さまざまな不安が重なった複合ショックとなりました。

 当時不安材料となったのは、以下4点です。
(1)QE3終了への不安
(2)欧州景気停滞への不安
(3)原油価格急落への不安
(4)エボラ出血熱感染拡大への不安

 2013~2014年のテーパリングショックについて、以下3点のまとめが可能です。

【1】世界中の投機マネーは、米FRBの金融政策に過敏に反応する。テーパリングの話題には売りで反応。

【2】米国のテーパリングに絡む思惑で世界的に株が売られる時、日経平均はNYダウよりも大きく下がる傾向がある。外国人投資家から見て日本株は世界景気敏感株で、米国株はディフェンシブ株であるため。

【3】テーパリングが実施されても、金融緩和的状況はすぐには変わらず

 テーパリングは量的緩和の終了であって、金融引き締めの開始ではありません。したがって、テーパリングに絡むショック安が一巡した後、2014年は世界的に株が買い戻されました。