含み損でも売らず、上昇するのを待つ

──2013年末に売却し、改めて積み立てを始めてからも、たまに売却したりしていますか?

 僕は売却のタイミングを決めています。積み立てを始めてすぐ含み益が出たときはプラス20%になったら売る。反対に含み損になったら売らずに上昇するのを待ち、プラスマイナス0%(評価損益0%)に戻ったら売るというものです。だから、何度か売却しました。

──インデックスファンドの積み立てを行っている人には、老後資金を貯めるためという人が多いですよね。だから、途中で売却する人は多くありません。井上さんが、途中で売却するのはどんな理由があるのですか。

 含み益が出たらプラス20%で売るというのは「あまり欲張ってもしょうがない、20%増なら十分だろう」という思いがあるからです。もちろん、30%増、40%増になる可能性もあります。でも、景気は循環するというセオリーを考えると、どこかで下落に向かいます。でも、僕にはそれがいつかを予測できない。であるなら、自分なりにルールを決めて、それに従おうということです。

──後々、30%増、40%増になっても後悔しませんか?

 それはまあ…後悔しないことはないですが(笑)、割り切るようにしています。20%でもちゃんと増えてますし利益が確定したら安心もできますしね。

雑音に惑わされず、世界経済の成長を信じて、きっちりと利益確定していくスタイルは一貫していて気持ちいい。ブレない投資哲学はぜひ見習いたい。

──含み損になったら売らない、というのは?

 含み損になるのは基準価額が下がったからじゃないですか。つまり、リーマン・ショックのときと同じで、より多く買えるようになった。当然、積み立てを続けたほうがトクだということです。

──では、いったん減っても、買値水準に戻ったら売るという理由は?

 例えば、今回のコロナ・ショックのような事態に見舞われると、けっこうショックなんですね。大きく増えているわけだから、少し基準価額が下がっただけでも、マイナスが大きくなる。それが何日も続くと、身が引き裂かれるような思いがして、精神的にツライ。それならば、0%=買値水準に戻った時点で利益を確定してしまおうと。

──そのとき下落してもいつかまた上昇する可能性が高いわけですよね。

 それはそうなのですが、場合によっては5、6年待たなければならないかもしれません。僕が積み立てを始めたのはリーマン・ショックの時期で、もしも2007年8月の時点で5,000万円とか積み立てていたら、その後3,000万円くらいまで下がってそれが5年くらい回復しないってことです。結構辛くないですか?

 それと僕の場合は、もう1つ売却する理由があります。10年間投資を続けるうちに、いろいろと興味が広がってきたんですね。優待株投資をやってみたいとか、不動産投資も面白そうだなとか。それらを実行するには資金がいるわけで、だから売却するようになりました。

──もう1つ、質問です。売却にともなう税金のことを考えると、売却→再投資という方法は利益を薄くする可能性がありますよね。その点はどのようにお考えですか。

 それは否定しません。ただ、そこはケースバイケースでしょうね。売却した資金を元手に新しいことを始めて、それが大きな利益を生んだら、税金を払ってでも売ってよかったということになりますし。

──何が正解かは、いちがいに言えない?

 はい、そう思います。だから、結局は自分が納得できる方法を選ぶのがベターではないでしょうか。僕は景気が上がっても下がっても全く気にしなくていいので、今の売却ルールを結構気に入ってます。