ANA、日本航空の投資判断は?

【3】ANA HD(9202)

 ANA HDは、前期(2019年3月期)に営業利益で最高益を更新しました。ところが、今期(2020年3月期)の営業利益は前期比▲15.2%の1,400億円と低下する見通しです。米中貿易摩擦による景況悪化、日韓関係悪化、香港デモの影響を受けて、国際貨物や国際ビジネス客の需要が伸び悩んでいます。さらに、今後のビジネス拡大に向けた先行費用を計上したことも影響しています。

 そこに追い打ちとなったのが、新型コロナ・ショックです。1-3月期の旅客が落ち込むと、今期の営業利益見通しはさらに下方修正される可能性があります。

 それでも、ANAは中長期的に業績回復が見込めるので、株価が下がってきた今、投資する価値があると考えています。

 長い目でみて、日本の観光ブームは復活すると思います。ANAは、将来、観光ブームが復活すれば、羽田発着便の増加効果もあり、最高益を再び更新していく力があると判断しています。

 同社の業績拡大に効果が大きいのは、羽田発着便の増加です。過去に新たに配分される発着枠の配分を多く受けてきたことが、業績拡大に寄与してきました。世界の航空業界を見渡すと、既存の大手航空会社は、LCC(低運賃の航空会社)との競争激化で、軒並み業績が悪化しています。

 日本の航空会社の業績が好調なのは、海外に比べると、まだ国内ではLCCとの競合が少ないからと言えます。特に、羽田空港では、深夜しかLCCが発着しないので、羽田空港が航空会社のドル箱となっています。

 ANAはこれからも観光ブームの恩恵を受け、長期投資に適格の優待銘柄と判断しています。ただし、将来、羽田空港にLCCが大量に入ってくるようになる場合は、投資判断を変える必要が出ます。羽田空港の発着枠は簡単に増やせないことと、現時点での日本の航空行政を見る限り、そのリスクは低いと考えています。

【4】日本航空(9201)

 日本航空は、優待に加え、配当利回りが4.2%(3月3日時点)と高いことも魅力です。日本航空もANAと同様、新型コロナ・ショックで業績が悪化し、株価も下落しています。今期の営業利益は、前期比▲20.5%の1,400億円に減少する見込みです。ただし、中長期で業績回復を見込んでいるので、投資していって良いと判断しています。その理由は、ANAとほぼ同じです。

 日本で観光ブームが復活する際には、最高益を更新していく力があると考えています。ANAと同様、収益力への貢献が大きいのは、羽田発着便です。

 前期まで、ANAが連続で最高益を更新する間、日本航空が最高益を更新できなかったのは、羽田発着便の新規割り当ての差で説明できます。ANAは、日本航空よりも後から国際便に進出したため、これまで優先的に羽田発着便の配分を受けられました。それが、ANAの最高益更新に貢献していました。

 ただし、ANAへの羽田便の優先配分は、2019年までで終了しました。2020年以降は、日本航空にもANAにもそれぞれ羽田空港の国際線発着枠の増枠は、応分に配分される見込みです。

【5】KDDI(9433)

 KDDIは、優待に加え、予想配当利回りが3.8%(3月3日時点)と高いことも魅力です。 KDDI株は、携帯電話事業の競争激化懸念で株価の上値が重くなっていますが、業績は好調です。世界景気に影響されずに安定成長を続け、2020年3月期に18期連続の増配を予定しています。ケータイ電話収入は、減少し始めていますが、通信と融合したライフデザイン事業の利益拡大によって、成長を続けています。これからも安定高収益を維持していくと予想しています。

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