新型コロナ・ショックが続く中、短期的な株価不安は払拭できませんが、私は、日本株は長期投資で良い買い場を迎えていると判断しています。株価が下がったところで、人気優待銘柄に投資するのも良いと考えます。
そこで、今日は、3月の人気優待トップ10についてコメントします。
3月に優待を得る権利が確定する銘柄の人気トップ10
人気トップ10【注】は、以下の通りです。
【注】人気トップ10
3月に株主優待を得る権利が確定する銘柄は、808あります。楽天証券のお客様で保有している株主の数が多いほど、人気が高いと判断し、保有株主数の上位10社をピックアップしました。
ただし、明らかに「優待」以外の目的で保有しているお客様が多い銘柄はランキングから外しました。具体的には、「新車購入割引」のみの優待は、優待で人気が出ているとは考えられないことから、ランキングから除外しました。
人気順位 | コード | 銘柄名 | 株価:円 | 配当利回り | 優待内容 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 8591 | オリックス | 1,720.5 | 4.4% | 優待内容 |
2 | 9831 | ヤマダ電機 | 517.0 | 2.5% | 優待内容 |
3 | 9202 | ANA HD | 2,952.0 | 2.5% | 優待内容 |
4 | 9201 | 日本航空 | 2,641.5 | 4.2% | 優待内容 |
5 | 9433 | KDDI | 3,050.0 | 3.8% | 優待内容 |
6 | 7412 | アトム | 921.0 | 0.2% | 優待内容 |
7 | 3099 | 三越伊勢丹HD | 705.0 | 1.7% | 優待内容 |
8 | 7867 | タカラトミー | 933.0 | 3.2% | 優待内容 |
9 | 7421 | カッパ・クリエイト | 1,296.0 | 0.4% | 優待内容 |
10 | 4661 | オリエンタルランド | 13,075.0 | 0.3% | 優待内容 |
出所:楽天証券「株主優待検索」。配当利回りは今期の1株当たり年間配当金(会社予想)を3月3日の株価で割って算出。ただし、年間配当金の予想を公表していないヤマダ電機、カッパ・クリエイトは市場予想を使用。今期とは2020年3月期のこと |
株価の右側の「優待内容」をクリックしていただくと、どのような優待を実施しているかご覧いただくことができます。
「いつまでに買わないと優待や配当の権利が得られないか」には、ご注意ください。上記に掲載した人気トップ10銘柄はすべて「3月27日(金)」が権利付き最終日です。
なお、優待内容は、予告なく変更されることもありますので、常に最新の情報をチェックしてください。楽天証券HPでは、1カ月ごとに優待内容を更新しています。
「配当利回り」も重要
優待投資を始めようと思っている方に、「優待内容の魅力」だけ見て、予想配当利回りを見ない方もいらっしゃいます。予想配当利回りも、必ず見るようにしましょう。配当利回りが高ければ、受け取った配当金で好きなものを買うことができるからです。
優待品が魅力でも配当利回りが低い銘柄は、株主への利益配分が充実しているとはいえません。優待品と配当金の魅力を両方見て判断するのが、合理的です。
上記の表を見ると、オリックス(配当利回り4.4%:3月3日時点)、日本航空(同4.2%)、KDDI(同3.8%)、タカラトミー(同3.2%)は、優待が魅力的、かつ配当利回りが高い銘柄として、注目できます。配当利回りが2%前後の銘柄も配当利回りでもそこそこ評価できます。ただし、ヤマダ電機は配当利回り(市場予想)が2.5%ですが、業績低迷が続いているので、投資は避けた方が良いと判断しています。
配当利回りが1%に達していないアトム、カッパ・クリエイト、オリエンタルランドは、優待が魅力でも配当利回りが低く、総合的に評価して株主への利益還元が魅力的とは言えません。アトムは、業績不振が続き、今期最終利益が赤字見通しなので、投資は避けた方が良いと思います。
なお、配当利回りは確定利回りではなく、業績変動にともなって増えたり減ったりすることには、注意が必要です。
人気トップ10銘柄の業績をチェック
優待銘柄を選ぶ時、「優待内容」「配当利回り」だけで決める方もいますが、株式投資である以上、最低限、足元の業績はチェックしましょう。まず、人気トップ10の前期から今期にかけての連結営業利益の推移を見てください。
前期・今期とは、2019年3月期・2020年3月期のことです。
3月優待人気トップ10の連結営業利益:前期実績と今期会社予想
「優待投資でも、株式投資である以上、業績を見て投資しましょう」と申し上げましたが、それは「業績好調の会社だけ買い、業績不振の会社は避けましょう」と言っているわけでは、決してありません。
どんな企業も長い年月のうちには、業績が良くなったり悪くなったりします。業績が低迷している時は株価が安くなっているので、もし将来回復が見込まれるならば、安く買う好機かもしれません。
新型コロナウイルス・ショックの影響は?
優待人気上位には、小売り・サービス・航空業の銘柄が多数入っています。小売り・サービス・航空業と言うと、今まさに新型コロナウイルス・ショックでダメージを受け、業績が急速に悪化し、株価の下落率が相対的に高くなっている業種です。
新型コロナ感染防止による消費の落ち込みが長期化すると、今期(2020年3月期)の業績予想が、さらに下方修正されるリスクもあります。
私は、新型コロナの影響は、年後半には低下すると予想しています。治療法・予防法や簡単な検査方法が明らかになるにつれ、新規感染者が減り、経済活動は正常化していくと予想しています。
風評被害まで考えると、観光産業のダメージは長引くかもしれませんが、それでも長い目で見れば、観光ブームが復活し、業績は回復に向かうと予想しています。したがって、今、新型コロナ・ショックで急落している小売り・サービス・航空株の中には、長期投資で買い場を迎えている銘柄が多いと考えています。
ANA HD、日本航空、三越伊勢丹HD、オリエンタルランドなどは、新型コロナ・ショックで業績にダメージが及んでいると考えられます。
ANA HD、日本航空は、短期的に業績が悪化しても、中長期で業績回復を見込んでいるので、投資をしていって良いと私は判断しています。三越伊勢丹HDは、業績低迷が長期化するリスクがあるので、投資は慎重に考えた方が良いと思います。オリエンタルランドは、コロナ対策で短期的に業績が悪化しますが、中長期で回復を見込みます。ただし、株価バリュエーションが高い(PERなどで割安感がない)ので、積極的に投資したいとは思いません。
業績を見るとき、もう1つ見るべき重要ポイントがあります。営業利益率の高さを見ることです。競争力が強く、収益基盤が堅固な銘柄は、一般的に営業利益率が高くなります。上の表で見ると、オリックス、日本航空、KDDI、オリエンタルランドは、営業利益率が高く、収益の安定性を評価できます。
人気トップ5、窪田のコメント
人気上位の5位まで、以下、個別に詳しくコメントします。
【1】オリックス(8591)
オリックスは、優待に加え、予想配当利回りが4.4%(3月3日時点)と高いことも魅力です。前期まで、純利益は5期連続で最高益を更新していました。
今期は減益となる見込みですが、収益基盤は安定的で、長期的に安定収益を稼ぐと予想しています。リース事業でコア収益を稼ぎつつ、信託・保険・事業投資など幅広い多角化で利益を稼いでいます。
オリックスは、海外で稼ぐ力があることも高く評価できます。今期第3四半期まで(2019年4-12月期)の利益で見ると、海外事業の利益は前年比363億円増の1,319億円で、セグメント利益全体の37%を占めています。
【2】ヤマダ電機(9831)
ヤマダ電機への投資は見送るべきと判断しています。優待人気株として常に上位に出てくるのですが、ヤマダ電機を長年分析してきたアナリストとして、違和感を覚えています。
ヤマダ電機は、構造的に収益力が低下しています。同社は、2017年3月期から2019年3月期まで、3期連続で業績見通しを下方修正しました。
2017年3月期の営業利益を、同社は期初に714億円と予想していましたが、着地は578億円でした。2018年3月期の営業利益は、期初予想が746億円でしたが、着地は387億円でした。そして、前期(2019年3月期)の営業利益は、期初予想が721億円でしたが、着地は278億円でした。
今期(2020年3月期)の営業利益について、ヤマダ電機は前期比52.9%の426億円を見込んでいます。上半期(2019年4-9月期)に247億円の営業利益をあげていますが、消費税引き上げ前の駆け込み販売の恩恵を受けています。下半期は、消費税引き上げ後の落ち込みに加え、新型コロナウイルスによるインバウンド消費減少の影響を受け、業績が悪化します。通期の営業利益は、会社予想に少し足りなくなる可能性があると見ています。
2つの経営戦略のミスが、ヤマダ電機の構造的な収益低下につながっています。1つは、出店戦略のミス。都市部に集中出店せず、郊外や地方に大量出店したのが裏目に出ました。もう1つは、多角化戦略のミスです。エスバイエルを買収して参入した住宅事業が足を引っ張っています。家電販売と住宅販売は、それぞれ専門知識が必要で、シナジーを出しにくい面があったと考えています。
住宅の販売員には高度な専門知識が必要で、家電量販店でその人員を育成するのは容易でありません。住宅事業の経営そのものにも、下請け業者の管理や部材の調達などで家電量販店とはまったく異なるノウハウが必要です。住宅は新商品の開発競争も厳しくなっています。スマートハウスや介護住宅の開発で優位にたつのは困難です。
ヤマダ電機が買収した旧エスバイエルは、ツーバイフォー工法で安価な規格品を作るのに強みがありましたが、多様な商品開発が求められる時代に入って、競争力が低下しつつありました。ヤマダ電機の傘下に入っても、強みを取り戻すのは難しい状況です。
ヤマダ電機は、経営不振に陥っている大塚家具を子会社化しました。赤字続きの大塚家具を買収しても業績を立て直すメドは立たず、エスバイエルと同様、経営の重荷となるでしょう。
もし大塚家具が、すぐれた商品を持ちながら販売力の不足で経営が低迷しているならば、ヤマダ電機の販売力で立て直すことが可能かもしれません。ところが、大塚家具の不振は販売力の問題ではありません。ニトリと比べて商品力で劣後していることが不振の原因です。ニトリは住居製品・生活雑貨で次々と魅力的な新製品を開発し、売り上げを伸ばしています。大塚家具の販売を立て直すには、住居製品でニトリのように魅力的なプライベートブランド品を次々と開発する必要があります。
ところが、ヤマダ電機には販売力はありますが、家具・住居製品の分野の商品開発力があるとは考えられません。大塚家具の買収が経営判断のミスであったことが判明するのは、時間の問題と考えます。
ANA、日本航空の投資判断は?
【3】ANA HD(9202)
ANA HDは、前期(2019年3月期)に営業利益で最高益を更新しました。ところが、今期(2020年3月期)の営業利益は前期比▲15.2%の1,400億円と低下する見通しです。米中貿易摩擦による景況悪化、日韓関係悪化、香港デモの影響を受けて、国際貨物や国際ビジネス客の需要が伸び悩んでいます。さらに、今後のビジネス拡大に向けた先行費用を計上したことも影響しています。
そこに追い打ちとなったのが、新型コロナ・ショックです。1-3月期の旅客が落ち込むと、今期の営業利益見通しはさらに下方修正される可能性があります。
それでも、ANAは中長期的に業績回復が見込めるので、株価が下がってきた今、投資する価値があると考えています。
長い目でみて、日本の観光ブームは復活すると思います。ANAは、将来、観光ブームが復活すれば、羽田発着便の増加効果もあり、最高益を再び更新していく力があると判断しています。
同社の業績拡大に効果が大きいのは、羽田発着便の増加です。過去に新たに配分される発着枠の配分を多く受けてきたことが、業績拡大に寄与してきました。世界の航空業界を見渡すと、既存の大手航空会社は、LCC(低運賃の航空会社)との競争激化で、軒並み業績が悪化しています。
日本の航空会社の業績が好調なのは、海外に比べると、まだ国内ではLCCとの競合が少ないからと言えます。特に、羽田空港では、深夜しかLCCが発着しないので、羽田空港が航空会社のドル箱となっています。
ANAはこれからも観光ブームの恩恵を受け、長期投資に適格の優待銘柄と判断しています。ただし、将来、羽田空港にLCCが大量に入ってくるようになる場合は、投資判断を変える必要が出ます。羽田空港の発着枠は簡単に増やせないことと、現時点での日本の航空行政を見る限り、そのリスクは低いと考えています。
【4】日本航空(9201)
日本航空は、優待に加え、配当利回りが4.2%(3月3日時点)と高いことも魅力です。日本航空もANAと同様、新型コロナ・ショックで業績が悪化し、株価も下落しています。今期の営業利益は、前期比▲20.5%の1,400億円に減少する見込みです。ただし、中長期で業績回復を見込んでいるので、投資していって良いと判断しています。その理由は、ANAとほぼ同じです。
日本で観光ブームが復活する際には、最高益を更新していく力があると考えています。ANAと同様、収益力への貢献が大きいのは、羽田発着便です。
前期まで、ANAが連続で最高益を更新する間、日本航空が最高益を更新できなかったのは、羽田発着便の新規割り当ての差で説明できます。ANAは、日本航空よりも後から国際便に進出したため、これまで優先的に羽田発着便の配分を受けられました。それが、ANAの最高益更新に貢献していました。
ただし、ANAへの羽田便の優先配分は、2019年までで終了しました。2020年以降は、日本航空にもANAにもそれぞれ羽田空港の国際線発着枠の増枠は、応分に配分される見込みです。
【5】KDDI(9433)
KDDIは、優待に加え、予想配当利回りが3.8%(3月3日時点)と高いことも魅力です。 KDDI株は、携帯電話事業の競争激化懸念で株価の上値が重くなっていますが、業績は好調です。世界景気に影響されずに安定成長を続け、2020年3月期に18期連続の増配を予定しています。ケータイ電話収入は、減少し始めていますが、通信と融合したライフデザイン事業の利益拡大によって、成長を続けています。これからも安定高収益を維持していくと予想しています。
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