米大統領選挙の先に見えるリスク

 2020年には、再選を目指すトランプ大統領の意向に沿って、米国の景気と株価が持ちこたえるシナリオに、そこそこ実現性があると考えています。共和党、民主党双方の超党派で積極的な予算を打ち出していることもポジティブです。

 米国以外に目を向けると、景気悪化で先行する欧州と中国にも自助努力策が見込まれます。ユーロ圏では、一強と言われたドイツが景気後退寸前まで来ており、ついに財政政策が発動されそうです。ドイツ経済を最初につまずかせた自動車部門の不振もテクニカルな悪化部分は収束しつつあります。

 欧州、日本、新興国を景気悪化に引きずり込んでいる中国もまた、景気対策に余念がありません。金融緩和を進め、鉄道や高速道路などインフラ投資を積極化しています。

 ただし、米欧中経済それぞれが2020年をある程度底堅く推移するにしても、新たな景気拡大サイクルのスタートとは判断されません。米国はすでにほぼ完全雇用に至り、これ以上の景気拡大の伸び代(のびしろ)は限られています。その中で、いったん落ち込んだ企業心理がどれだけ持ち直し、土俵内にとどまっていられるかが、当面の焦点です。同時に、米経済が何らかのショックに対して脆弱(ぜいじゃく)化する火種として、景気終盤の再金融緩和で膨らむ企業債務が非常に気がかりです。

 ユーロ圏は金融政策と財政政策を発動しても、景気サイクルが自律的に力強く上向くようには見えません。どうも日本に続いて、構造的な低成長軌道、「経済の低体温症」に向かいつつあると判断しています。

 さらに、懸念されるのは中国です。中国は、米国の圧力に屈してはならずと、金融緩和、規制緩和で信用を再膨張させて、不効率なインフラ建設など不動産投資を進めています。これが米企業の債務膨張とは比較にならないほど、量と質の両面で問題含みに見えます。共産党一党独裁のシステムでがっちりサポートすれば、中国経済をある程度下支えられるという面はあります。一方で、中国の膨れ上がる債務は、米国の圧力にさらされると、最大のウイークポイントになるでしょう。