実は、本当に怖いのはここから!?

 今後の展開を考えます。短期的には、中東情勢がさらに悪化する可能性があります。米国は3月の国連安保理決議で、イスラエルを擁護する姿勢を初めて崩しました。これまでイスラエルの権利を守る、という大義名分の下、停戦に関する決議に拒否権を発動し続けてきましたが、3月の決議では棄権を選択しました。

 これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相は「明らかな後退」と怒りをあらわにしました。態度が先鋭化したイスラエルの次の行動が、シリア空爆でした。イスラエルと対峙(たいじ)するイスラム武装組織は以下の通り、中東地域に点在しています。

 こうしたイスラム武装組織とイスラエルをめぐる情勢が悪化し、同地域からの原油の供給減少懸念が高まる可能性は否定できません。

図:イランが支援しているとされるイスラム武装組織とその拠点があるとされる地域 

出所:各種資料およびMapChartを用いて筆者作成 イラストはPIXTA

 Energy Instituteのデータによれば、中東地域からの原油輸出シェアはおよそ35%です(2022年)。イランと考え方の方向性が似ているロシアを合わせると47%です。足元のリスクが高まれば高まるほど、供給減少懸念が高まり、引いては「怖い原油高」を加速させる可能性があります。

 また、以下はOPECプラスの原油生産量の推移です(継続性を維持するため脱退したアンゴラを含んでいる)。減産期間中にあり、全体として生産量が上限を上回らない(減産順守)状態が続いています。さらには、自主減産を強化してさらなる生産削減に励んでいることがうかがえます。

 組織内では、個別に上限を上回ってしまった国が、後のタイミングで上回った分を削減して生産する埋合せを実施しており、需給バランスを引き締める策を強化しています。こうした強い意志はどこから来るのでしょうか。西側・非西側の分断深化が、彼らを減産徹底に駆り立てている可能性があります。

図:OPECプラスの原油生産量 単位:百万バレル/日量

出所:OPECの資料およびブルームバーグのデータより筆者作成

 目先、材料の頂点は、中央銀行ではなく、原油相場があることを意識する必要があると、筆者は考えています。まだ目先、「怖い原油高」が続く可能性があり、注意が必要です。

[参考]エネルギー関連の投資商品例

国内株式(NISA (ニーサ:少額投資非課税制度)成長投資枠活用可)

INPEX
出光興産

国内ETF・ETN(NISA成長投資枠活用可)

NNドバイ原油先物ブル
NF原油インデックス連動型上場
WTI原油価格連動型上場投信
NNドバイ原油先物ベア

外国株式(NISA成長投資枠活用可)

エクソン・モービル
シェブロン
オクシデンタル・ペトロリアム

海外ETF(NISA成長投資枠活用可)

iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド
グローバルX MLP
グローバルX URANIUM
ヴァンエック・ウラン+原子力エネルギーETF

投資信託(NISA成長投資枠活用可)

HSBC 世界資源エネルギー オープン
シェール関連株オープン

海外先物

WTI原油(ミニあり)

CFD

WTI原油・ブレント原油・天然ガス